上 下
240 / 327
6 残滓

side白桜5

しおりを挟む
「……百合姫は、変わりないか?」

俺のもと――月御門で預かっている物忌(ものいみ)の少女。

黒はあからさまに話題を逸らした。

「百合姫は問題ない。……今のところ、だが」

「……俺が逢いに行っても百合姫には嫌われるだけで、あちらの気分転換にもならないだろう。……白にばかり百合姫のことは任せきりにしてすまない」

「じい様が請(う)けた案件だ。大事ない」

百合姫の件は、俺が先代の祖父から受け継いだ仕事だ。

百合姫は物忌(ものいみ)――百合姫の場合は、生まれついて憑き物があるということ――であるために、生家である水旧(みなもと)家より、旧縁の月御門家に預けられている。

――百合姫の憑き物は、祓ってはいけない類のもの。

そして百合姫は、黒との仲が険悪だ。

俺にとっては、生まれた時より傍にいる妹のような親友。

百合姫も俺が女だと知る数少ない一人なのだが、その俺を、嫁にする! と堂々と宣言する黒に対しては反感しかないようだ。

三人集まれば自分だけが護られる対象であるのも嫌らしい。

「ん?」

ふと、耳に言霊が届いた。

式に下していなくても、《契約》した妖異や、神や鬼の類と声の送り合いが出来る。

妖力が高いものではないとその声は人語にはならないが、俺はそうではないものの声も聞くことが出来た。

それは母様ゆずりらしい。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【第一部完結】お望み通り、闇堕ち(仮)の悪役令嬢(ラスボス)になってあげましょう!

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
「アメリア・ナイトロード、よくも未来の婚約者となるリリス嬢に酷い仕打ちをしてくれたな。公爵令嬢の立場を悪用しての所業、この場でウィルフリードに変わって婚約破棄を言い渡す!」 「きゃー。スチュワート様ステキ☆」  本人でもない馬鹿王子に言いがかりを付けられ、その後に起きたリリス嬢毒殺未遂及び場を荒らしたと全ての責任を押し付けられて、アメリアは殺されてしまう。  全ての元凶はリリスだと語られたアメリアは深い絶望と憤怒に染まり、死の間際で吸血鬼女王として覚醒と同時に、自分の前世の記憶を取り戻す。  架橋鈴音(かけはしすずね)だったアメリアは、この世界が、乙女ゲーム《葬礼の乙女と黄昏の夢》で、自分が悪役令嬢かつラスボスのアメリア・ナイトロードに転生していたこと、もろもろ準備していたことを思い出し、復讐を誓った。  吸血鬼女王として覚醒した知識と力で、ゲームで死亡フラグのあるサブキャラ(非攻略キャラ)、中ボス、ラスボスを仲間にして国盗りを開始!  絵画バカの魔王と、モフモフ好きの死神、食いしん坊の冥府の使者、そしてうじうじ系泣き虫な邪神とそうそうたるメンバーなのだが、ゲームとなんだかキャラが違うし、一癖も二癖もある!? リリス、第二王子エルバートを含むざまあされる側の視点あり、大掛かりな復讐劇が始まる。

危険な森で目指せ快適異世界生活!

ハラーマル
ファンタジー
初めての彼氏との誕生日デート中、彼氏に裏切られた私は、貞操を守るため、展望台から飛び降りて・・・ 気がつくと、薄暗い洞窟の中で、よくわかんない種族に転生していました! 2人の子どもを助けて、一緒に森で生活することに・・・ だけどその森が、実は誰も生きて帰らないという危険な森で・・・ 出会った子ども達と、謎種族のスキルや魔法、持ち前の明るさと行動力で、危険な森で快適な生活を目指します!  ♢ ♢ ♢ 所謂、異世界転生ものです。 初めての投稿なので、色々不備もあると思いますが。軽い気持ちで読んでくださると幸いです。 誤字や、読みにくいところは見つけ次第修正しています。 内容を大きく変更した場合には、お知らせ致しますので、確認していただけると嬉しいです。 「小説家になろう」様「カクヨム」様でも連載させていただいています。 ※7月10日、「カクヨム」様の投稿について、アカウントを作成し直しました。

かわいいは正義(チート)でした!

孤子
ファンタジー
 ある日、親友と浜辺で遊んでからの帰り道。ついていない一日が終わりを告げようとしていたその時に、親友が海へ転落。  手を掴んで助けようとした私も一緒に溺れ、意識を失った私たち。気が付くと、そこは全く見知らぬ浜辺だった。あたりを見渡せど親友は見つからず、不意に自分の姿を見ると、それはまごうことなきスライムだった!  親友とともにスライムとなった私が異世界で生きる物語。ここに開幕!(なんつって)

スキル【海】ってなんですか?

陰陽@2作品コミカライズと書籍化準備中
ファンタジー
スキル【海】ってなんですか?〜使えないユニークスキルを貰った筈が、海どころか他人のアイテムボックスにまでつながってたので、商人として成り上がるつもりが、勇者と聖女の鍵を握るスキルとして追われています〜 ※書籍化準備中。 ※情報の海が解禁してからがある意味本番です。  我が家は代々優秀な魔法使いを排出していた侯爵家。僕はそこの長男で、期待されて挑んだ鑑定。  だけど僕が貰ったスキルは、謎のユニークスキル──〈海〉だった。  期待ハズレとして、婚約も破棄され、弟が家を継ぐことになった。  家を継げる子ども以外は平民として放逐という、貴族の取り決めにより、僕は父さまの弟である、元冒険者の叔父さんの家で、平民として暮らすことになった。  ……まあ、そもそも貴族なんて向いてないと思っていたし、僕が好きだったのは、幼なじみで我が家のメイドの娘のミーニャだったから、むしろ有り難いかも。  それに〈海〉があれば、食べるのには困らないよね!僕のところは近くに海がない国だから、魚を売って暮らすのもいいな。  スキルで手に入れたものは、ちゃんと説明もしてくれるから、なんの魚だとか毒があるとか、そういうことも分かるしね!  だけどこのスキル、単純に海につながってたわけじゃなかった。  生命の海は思った通りの効果だったけど。  ──時空の海、って、なんだろう?  階段を降りると、光る扉と灰色の扉。  灰色の扉を開いたら、そこは最近亡くなったばかりの、僕のお祖父さまのアイテムボックスの中だった。  アイテムボックスは持ち主が死ぬと、中に入れたものが取り出せなくなると聞いていたけれど……。ここにつながってたなんて!?  灰色の扉はすべて死んだ人のアイテムボックスにつながっている。階段を降りれば降りるほど、大昔に死んだ人のアイテムボックスにつながる扉に通じる。  そうだ!この力を使って、僕は古物商を始めよう!だけど、えっと……、伝説の武器だとか、ドラゴンの素材って……。  おまけに精霊の宿るアイテムって……。  なんでこんなものまで入ってるの!?  失われし伝説の武器を手にした者が次世代の勇者って……。ムリムリムリ!  そっとしておこう……。  仲間と協力しながら、商人として成り上がってみせる!  そう思っていたんだけど……。  どうやら僕のスキルが、勇者と聖女が現れる鍵を握っているらしくて?  そんな時、スキルが新たに進化する。  ──情報の海って、なんなの!?  元婚約者も追いかけてきて、いったい僕、どうなっちゃうの?

間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜

舞桜
ファンタジー
 初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎  って、何故こんなにハイテンションかと言うとただ今絶賛大パニック中だからです!  何故こうなった…  突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、 手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、 だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎  転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?  そして死亡する原因には不可解な点が…  様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、 目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“  そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪ *神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのかのんびりできるといいね!(希望的観測っw) *投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい *この作品は“小説家になろう“にも掲載しています

スライムを出すだけのゴミスキルだと思ったけど妖精や精霊はこのドロドロが好きみたいです

兎屋亀吉
ファンタジー
新卒サラリーマンの滝川利一は、同じ電車に乗り合わせた十数人の乗客と一緒に突如として異世界へと転移してしまう。転移した先は深い森の中で、一同は茫然と立ち尽くす。森での生活は過酷だったが、スキルというものを全員が得ていたおかげでなんとか回りだす。有用なスキルを得て集団での地位を確立していく一部の人間とは裏腹に、『スライム』というドロドロとしたあの謎素材を生み出すだけスキルを得た滝川の地位は低下していく。そしてついにある日の夕方、薪集めから戻った滝川の前にはもぬけの殻となった野営地が広がっていた。森の中にポツンと置き去りにされてしまった滝川のサバイバルが始まる。

万分の一の確率でパートナーが見つかるって、そんな事あるのか?

Gai
ファンタジー
鉄柱が頭にぶつかって死んでしまった少年は神様からもう異世界へ転生させて貰う。 貴族の四男として生まれ変わった少年、ライルは属性魔法の適性が全くなかった。 貴族として生まれた子にとっては珍しいケースであり、ラガスは周りから憐みの目で見られる事が多かった。 ただ、ライルには属性魔法なんて比べものにならない魔法を持っていた。 「はぁーー・・・・・・属性魔法を持っている、それってそんなに凄い事なのか?」 基本気だるげなライルは基本目立ちたくはないが、売られた値段は良い値で買う男。 さてさて、プライドをへし折られる犠牲者はどれだけ出るのか・・・・・・ タイトルに書いてあるパートナーは序盤にはあまり出てきません。

修行と生活費を稼ぐ為に国営ギルドのお仕事をひたすらこなしていた女剣士は、思わぬ報酬として自分が平定した土地を頂いたので開墾してみることにした

ナポリ
ファンタジー
敵は多く、精強であるほどいい。 いい鍛錬にもなるしいい稼ぎにもなる。 ナナは今日もギルドで依頼を受ける。 依頼の内容は専ら、戦争中の敵国部隊の攻撃や、土地の奪還等の傭兵任務だ。 基本的にこの手の依頼を受けた場合は軍と合流して共に行軍するのだが、ナナは違った。 彼女は修行を主な目的としていたため自分が相手をする敵は多い方が良かったし、何より彼女はコミュ障だったのだ。 ある時いつものように彼女がギルドに行くと、王国近衛兵が彼女を探していた。 「おおナナ殿、お待ちしておりました。 国王陛下がナナ殿に此度の戦果に対する褒美を与えたいとの事。 我々にご同行いただけますかな?」 気乗りはしないが国王直々の呼び出しとなれば無下にも出来ずやむを得ず彼女は王城へと向かった。 「ナナヘ褒美としてお前が奪還した我が国の領地を与えよう。」 青天の霹靂にナナは固まってしまった。 貰ったはいいものの何をどうしたらいいのか。 とりあえず家と畑を作るところから始めよう。

処理中です...