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1 月夜の吸血鬼
side真紅12
しおりを挟む恥ずかしげもなくこんなことを言う奴が現存するのか。
いや、過去にいた保証もないけれど。あぶないあぶない。いくら助けられた身と言えど、気をつけなくちゃ。
でも。
「……ありがと」
すきだと言われて悪い気はしない。私も、桜も月もすきだ。
「桜木……?」
「私の苗字だけど?」
アパートの一室。そう名の書かれた部屋の前で黎は足を停めた。ドンピシャで私の部屋だった。
でも、本当にどんなにおいがしているんだろう。抽象的な言い方だったからはっきりとはわからなかった。
「親いないって言ってたけど、ここで降ろすか?」
「警察を呼ぶべき事態になる?」
「ならねーよ」
言い、黎はドアを開けた。
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