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side咲桜22

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「……な、咲桜。どうだろうか」

「どうだろうかって……」

唇が震える。流夜くんは、そっと静かな音で、告げた。

「桃子さんをゆるして、これからも生きてほしい」

これからも、自分の血も、ゆるして。

「―――ぁああああああ……っ」

悲鳴ごと、抱きしめられた。

あの記憶の日以来、ずっとゆるせないでいた。華取桃子という人を。咲桜と名付けた母親を。

自分だけいなくなってしまった、唯一の血の繋がり。

在義父さんは優しい人だった。本当の娘と同じように育ててくれた。本当の娘以上に大事にしてくれた。一生懸命、がんばって生きることで応えて来た。

だいじょうぶ、咲桜は、父さんがいてくれるから、大丈夫だよ。母さんの分も、わたしがとうさんに優しくするからね。だから、泣かないで。さおが、がんばるから。

「ばかぁ……っ、母さん……っ、なんで死んじゃったの……っ」

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