朧咲夜5-愛してる。だから、さようなら。-【完】

桜月真澄

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三人が示した壁。

自分たちと同じ立場を望むのなら、これくらいは自分で見つけろと。

三人が越えられるほど簡単な壁は用意しない。

これは越えるのではなく、壊していく壁だ。

私は、流夜くんの傍(かたわ)らを望んでも、それは恋人という立場のもの。

流夜くんと同じ世界を見るために立ちたいと望んでいるわけではない。

もちろん、支えになりたいとは強く思っている。

遙音先輩が望んだのは、流夜くんたちと同じステージにいること。

だから、三人は壁を用意した。

あるいは試練と呼ばれる類のもの。

三人が越えられるような壁を作っておくわけがない。

今までの三人の応対を見ても、壊して挑まなければいけないほど、三人の壁は堅固だろう。

そして壁を用意するということは、それを壊してくるだろうと信じているからこそ。

三人は、先輩の成長を待っているのかもしれない。

――唐突に、そんな気がした。

手の中で慈しむ育て方ではなく。

自由の中で己に選ばせる。

自分たちを見つけ、頼ってきた子どもを。

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