上 下
64 / 83
3 美也と奏

22

しおりを挟む

「あたしの見る目がないとか、男の趣味が悪いとかそういうことなのよね。付き合ってる彼女がいるのに目移りするクソ野郎と付き合ってたワケよ。自分で言ってて笑けてくるわ」

はは、と自嘲する奏。美也は背筋を正して奏を見た。

「笑わないですよ」

「あん?」

「笑わないです。そのときそのときで、奏さんは真剣だったんですから。相手のことはどうでもいいです。奏さんが、真っすぐだったっていうことだけが事実です」

美也は奏の彼氏の顔もよく知らないが、奏が浮気をしたわけではない。

奏は真っすぐだったけど、それが届かなかった人たちだったのだろう。

「あんた……ほんとーにあのイケメンがいてくれてよかったね。あの人だいぶあんたの虫よけもしてたんじゃない?」

「? それって好きな人に異性が近づかないように、って意味ですよね? 私、誰にも榊さんを紹介とかしたことありませんけど……」

「美也、あの人――人って言っちゃうけど、人間じゃないのよ? 軽く超常現象起こせるでしょ」

「………」

(そうかもしれない!)

「そうかも……しれません……」

美也はうなりながらうなずいた。

――事実、今現在白桜や百合緋レベルに強い霊感がなければ見えないくらいに隠形(おんぎょう)した開斗と帯天が、美也と奏をつけていた。

二人で出かけると聞いて心配した榊が見張り兼護衛をつけようと考えていたら、開斗と帯天が立候補してきたのだ。

『帯天さん。巫女さまが飲んでるの美味しそうです。今度榊さまにおごらせましょう』

『………』

小龍の姿の開斗に、美也が出逢ったときの人の姿の帯天がうなずいた。

そんな二人の熱い視線を受けている美也は、二人には気づかずに奏と話している。

「んで? あんたの考えたあたしへの反撃ってほかにもあるの? 聞かせてみなよ」

「えっ、さ、さすがにそれは……」

「あたしのが結構なことしてたんだから、今更引かないわよ。怒らないし」

「ですが――」

「あれ、奏?」

ふと、男の声が降ってきた。

振り向いた奏が、小さく「げ」と言ったのが聞えた。

美也は誰だかわからなかったが、その男を見る奏は顔も嫌そうだ。

「……なんでいんのよ」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

十年目の離婚

杉本凪咲
恋愛
結婚十年目。 夫は離婚を切り出しました。 愛人と、その子供と、一緒に暮らしたいからと。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません

abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。 後宮はいつでも女の戦いが絶えない。 安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。 「どうして、この人を愛していたのかしら?」 ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。 それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!? 「あの人に興味はありません。勝手になさい!」

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

処理中です...