33 / 83
2 当代最高峰の陰陽師
16
しおりを挟む
「す、すみませっ……ふふっ!」
なんとか謝ろうとしても、美也はまた笑ってしまう。
榊はどうしていいのか手をうろうろさせていて、白桜の腕に巻き付いている使い龍もオロオロしだした。
白桜と天音は泰然自若と構えているが、百合緋は呆気にとられてしまっていた。
美也は美也で、これを腹の底から笑った、というのだと感じていた。
両親を亡くしてから、友達の前で笑うことは出来た。
でもそれは作り笑いに近くて、こんな、制御できないような大爆笑をしたことはなかった。
少し経って自然と美也の大爆笑が収まると、目元に浮かんだ涙をぬぐいながら美也が立ち上がった。
「すみませんでした……」
恥ずかしくなりながら頭を下げると、白桜が首を横に振った。
「笑えるのはいいことだ。何がおかしかったんだ?」
問われて、美也は迷った。
「その……榊さんと、使い龍さんのやり取りが面白くて……」
言葉を濁すと、使い龍がすっと白桜の腕を離れて、美也の目の前にやってきた。
「ぼく、巫女さまがもっと笑ってくれるように、榊さまと面白いやり取りします!」
そう言うなり、ぐるんと体を前転させた。
「えっ!?」
そして次の瞬間美也の目の前に立っていたのは……
「巫女さま、だいすきですっ」
美也に抱き着いてきた、六歳か七歳くらいの男の子だった。
「え? えっ?」
いきなりの転身に美也が戸惑っていると、榊が子供の首根っこを引っつかんで引きはがした。
「お前の巫女じゃねえんだよ。気安く触んな」
「榊さまの巫女さまだもん! ぼくが可愛がってもらって何も問題ないです!」
(この言い合い……)
「使い龍、さん……? 人間にもなれるの?」
美也に言われて、ぱあっと顔を輝かせる男の子。
「はいっ! ぼくですっ」
「挨拶」
榊に低い声で言われて、男の子ははっとして背筋を正した。
なんとか謝ろうとしても、美也はまた笑ってしまう。
榊はどうしていいのか手をうろうろさせていて、白桜の腕に巻き付いている使い龍もオロオロしだした。
白桜と天音は泰然自若と構えているが、百合緋は呆気にとられてしまっていた。
美也は美也で、これを腹の底から笑った、というのだと感じていた。
両親を亡くしてから、友達の前で笑うことは出来た。
でもそれは作り笑いに近くて、こんな、制御できないような大爆笑をしたことはなかった。
少し経って自然と美也の大爆笑が収まると、目元に浮かんだ涙をぬぐいながら美也が立ち上がった。
「すみませんでした……」
恥ずかしくなりながら頭を下げると、白桜が首を横に振った。
「笑えるのはいいことだ。何がおかしかったんだ?」
問われて、美也は迷った。
「その……榊さんと、使い龍さんのやり取りが面白くて……」
言葉を濁すと、使い龍がすっと白桜の腕を離れて、美也の目の前にやってきた。
「ぼく、巫女さまがもっと笑ってくれるように、榊さまと面白いやり取りします!」
そう言うなり、ぐるんと体を前転させた。
「えっ!?」
そして次の瞬間美也の目の前に立っていたのは……
「巫女さま、だいすきですっ」
美也に抱き着いてきた、六歳か七歳くらいの男の子だった。
「え? えっ?」
いきなりの転身に美也が戸惑っていると、榊が子供の首根っこを引っつかんで引きはがした。
「お前の巫女じゃねえんだよ。気安く触んな」
「榊さまの巫女さまだもん! ぼくが可愛がってもらって何も問題ないです!」
(この言い合い……)
「使い龍、さん……? 人間にもなれるの?」
美也に言われて、ぱあっと顔を輝かせる男の子。
「はいっ! ぼくですっ」
「挨拶」
榊に低い声で言われて、男の子ははっとして背筋を正した。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
最強退鬼師の寵愛花嫁
桜月真澄
恋愛
花園琴理
Hanazono Kotori
宮旭日心護
Miyaasahi Shingo
花園愛理
Hanazono Airi
クマ
Kuma
2024.2.14~
Sakuragi Masumi
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
その忌み子は最上級の鬼に溺愛される
あなはにす
恋愛
「よろしく、花嫁様」
顔の大きな痣から忌み子と呼ばれ、なくなった両親からの愛情を頼りに生きてきた子爵令嬢花咲(カザキ)。領地では飢饉が起きそうになっていた。自分を厄介者扱いする継母は飢饉の原因を最上級と言われる笛吹きの鬼にすることにし、花咲は強引に鬼の嫁として差し出される。
鬼は長い黒髪をもち、ツノの生えた美しい青年の姿をしていた。鬼は花咲に興味がなく、食べようとする。しかし、両親の望む生を全うするために花咲は、笛吹きの鬼の本当の花嫁になることを申し出る。最初は鬼におびえる花咲だったが、二人は共同生活を通して少しずつ愛を知っていく。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
運命の強制力が働いたと判断したので、即行で断捨離します
下菊みこと
恋愛
悲恋になるのかなぁ…ほぼお相手の男が出番がないですが、疑心暗鬼の末の誤解もあるとはいえ裏切られて傷ついて結果切り捨てて勝ちを拾いに行くお話です。
ご都合主義の多分これから未来は明るいはずのハッピーエンド?ビターエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
誤解ありきのアレコレだからあんまり読後感は良くないかも…でもよかったらご覧ください!
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる