上 下
27 / 83
2 当代最高峰の陰陽師

10

しおりを挟む

「……昔むかしの話だ。人の子と恋仲になった龍の子として生まれた、半神半人があった。その子らは親神の力をつぎ、超常能力があった。それによって繁栄するか、衰退するかはその子孫それぞれだったが……美也の代まで、その血は繋がれた。美也は、残された最後の一筋だ。俺は天界ではなく人界に居を持つ龍神の一角だから、面白半分にその半神半人の子孫を見守ってきた。そして……美也を見つけた」

(本当なんだ)

素直な感想はそれだった。

思い出せば榊は、自分が人間ではないと言ったことはなかった。

本当のことは言わなかったけれど、嘘をつかれたことはなかった。

そう思ったら、榊が口にしたことは本当なんだと腑に落ちた。

「じゃあ……私はその、龍神様の子孫、なんですか……?」

美也が確認すると、榊は真剣な顔でうなずいた。

「……そうだ。美也の母親が、その血筋だ」

「ってことは、おじさんも……?」

おじは、美也の母親の兄だ。

父方母方両方の祖父母がもういなく、父方にはきょうだいがいなかったため、美也はその縁で愛村の家に引き取られた。

「いや……誤解を生まないために話してしまうが、美也の母親とその兄は、親が連れ子同士の再婚だった。だから美也の母とその兄に血縁関係はなく、美也の従姉も、龍神の血は引いていないよ」

え、と息を呑む美也。それは初耳だった。おじから言われたこともない。

「お母さんとおじさんに血縁関係がないのだったら、私も……ってことですよね……?」

おじやおばが美也の母親との関係を知っているとしたら、戸籍上は妹の娘という赤の他人を育てろと押し付けられたことになる。

……もしかしたら、ずっと疎まれていた理由はそれか。

「それで? 榊は美也のあやかしを見る力まで封じて何をする気だったんだ」

白桜の言葉に、考えに落ちていた美也の意識がはっとする。そういえば、霊力を封じて、とか言っていた。

榊は白桜を見据える。

「……今までの彼の方(かのかた)の子孫は、能力の高さから破滅する者が多かった。……美也の両親の事故も、あやかしが原因だ。だから美也には、あやかしなど関わらず普通の人間として生きて幸せになってほしかった。それが理由で……美也の霊力を封じていた」

事故はあやかしが原因? 聞き捨てならない話だ。

だが、美也が問う前に白桜が口を開いた。

「さすがあやかしの最高格、龍神にしか出来ないことか……。榊の理由はわかったが……いずれは美也嬢を巫女にするつもりだったのだろう?」

その問いかけに、榊はしばらく黙ったあと苦々し気に口を開いた。

「……それが俺のできる、美也の護り方だった」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

失恋少女と狐の見廻り

紺乃未色(こんのみいろ)
キャラ文芸
失恋中の高校生、彩羽(いろは)の前にあらわれたのは、神の遣いである「千影之狐(ちかげのきつね)」だった。「協力すれば恋の願いを神へ届ける」という約束のもと、彩羽はとある旅館にスタッフとして潜り込み、「魂を盗る、人ならざる者」の調査を手伝うことに。 人生初のアルバイトにあたふたしながらも、奮闘する彩羽。そんな彼女に対して「面白い」と興味を抱く千影之狐。 一人と一匹は無事に奇妙な事件を解決できるのか? 不可思議でどこか妖しい「失恋からはじまる和風ファンタジー」

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

最強退鬼師の寵愛花嫁

桜月真澄
恋愛
花園琴理 Hanazono Kotori 宮旭日心護 Miyaasahi Shingo 花園愛理 Hanazono Airi クマ Kuma 2024.2.14~ Sakuragi Masumi

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

平凡令嬢の婚活事情〜あの人だけは、絶対ナイから!〜

本見りん
恋愛
「……だから、ミランダは無理だって!!」  王立学園に通う、ミランダ シュミット伯爵令嬢17歳。  偶然通りかかった学園の裏庭でミランダ本人がここにいるとも知らず噂しているのはこの学園の貴族令息たち。  ……彼らは、決して『高嶺の花ミランダ』として噂している訳ではない。  それは、ミランダが『平凡令嬢』だから。  いつからか『平凡令嬢』と噂されるようになっていたミランダ。『絶賛婚約者募集中』の彼女にはかなり不利な状況。  チラリと向こうを見てみれば、1人の女子生徒に3人の男子学生が。あちらも良くない噂の方々。  ……ミランダは、『あの人達だけはナイ!』と思っていだのだが……。 3万字少しの短編です。『完結保証』『ハッピーエンド』です!

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

処理中です...