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2 当代最高峰の陰陽師
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しおりを挟む美也は、自分の声が震えているのに気づいた。
榊と親しい人とは初めて会った。自分よりも榊のことを知っていて、榊からも信頼されていたりするかもしれない。
百合緋は、うーんとうなってから口を開く。
「一、二回会ったことはあるけど、知り合い以前の顔見知り程度の認識です。美也さんは幼い頃からお知り合いだと聞いたのですが」
その返事に、美也はまだつっかかりを覚えながらも、どこかほっとしていた。一回二回会っただけなんだ……と。
「はい……小さい頃、榊さんに命を救われました。それからもお世話になりっぱなしで……」
「榊様、美也さんが可愛くて仕方ないのですね」
百合緋が嬉しそうな顔で言う。
反対に美也はもやもやしてきた。
榊のことを美也よりたくさん知っていそうだし、百合緋の言葉を聞いても、榊のおつかい? を頼まれた人に頼られるような人がただの顔見知りなわけがないとも思ってしまう。
(はっ、いけない。善意でやってくれていることなのにっ)
心の中で、頭をぶんぶんと振った。
そして深く息を吐いて気持ちを落ち着かせる。
「あの……どうしてわたしに声をかけたか、教えてもらえませんか?」
「――それにつきましては、我が主からご説明させていただきます」
それまで黙っていた天音がそう言ったのを合図のように、百合緋が足を停めた。
長い塀が続いていると思ったら、大きな門が出てきた。その前で。
「ここが、陰陽道御門流宗家、月御門家の首都別邸よ。ここで美也さんの憂いが解決するように、祈っています」
百合緋が、また優しい顔で言う。
そして誰も触れていないのに、大きな門が内側へ開いた。
目をぱちくりさせる美也。
「どうぞ」
そう言った天音の姿が、黒髪のワンピース姿から、銀髪の着物姿に変わっている。
さすがにこれを手品で済ませられる美也ではなかった。
しかし驚いている暇がない。
情報と疑問が大渋滞を起こしていて、言われるがままについていくしか出来ない。
門から入って、邸内を先に歩く百合緋、それについていく美也、最後尾に天音といった並びで進んでいく。
もう天変地異が来ても驚けないかもしれない。
美也は頭の中がぐるぐるする感じがしてきた。
「あ、白桜!」
百合緋が声をあげた。
美也もそちらを追うように目をやれば、和服姿の青年がいた。
日に反射して少し茶色っぽく見える黒髪に、美丈夫というよりは美形で、先ほどの天音の圧倒するような美とは違って、人好きのする容姿だ。
(でも……もうこの人たち美の暴力だ……)
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