上 下
282 / 299
六 わりーわりー、足が滑った。

side咲桜11

しおりを挟む

「お蔭さまで。咲桜がいてくれるから、幸せ満喫中だ」

「うわあ……お前が言うとイラッとする」

「素直に聞けよ。そういうわけで、咲桜からは離れないから、認めてほしいと思う」

「……なんで俺が」

「知り合いだから。そんで、これからも知り合いでいんだろうから」

雑な理由だった。

「……華取さん」

「は、はい!」

「こんな奴のどこがいいの? 華取さんも奇特な人なんだね……」

若干言い回しが気になったけど、答えはすぐに出る。

「流夜くんだから、すきになりました。理由はあげればきりがありませんが、たぶん一番はそれです」

神宮流夜、個人に惚れた。それだけだ。

「……そうですか」

宮寺先生はため息とともに立ち上がった。

「神宮一人の問題だったら追い詰めたんですが、そうでもないみたいですね」

しおりを挟む

処理中です...