上 下
264 / 299
五 タチが悪いタイプの天才だ。

side咲桜63

しおりを挟む

「おかえりなさい!」

「あ……ただいま……」

言った直後、流夜くんは夜目にわかるほど顔を赤らめた。

「? どしたの?」

「いや……随分言ってなかったから……」

「なにを?」

「……気にするな」

「今のは気になるよー」

バツが悪そうにそっぽを向く流夜くんの腕を摑んで、早く! と家の中へその手を引いた。

箏子師匠の注意は――ちゃんと、聞いておくよ。おけるかな?

だって、『ただいま』って言って私のところへ帰って来てくれたことが、嬉しくて。

しおりを挟む

処理中です...