204 / 299
五 タチが悪いタイプの天才だ。
side頼5
しおりを挟む写真を見た先生は瞠目した。
写っているのは、夕陽の所為でシルエットだけ。
ジャングルジムの高い位置から手を伸ばしている子供と、その手を握られて宙に浮いている子供の写真だった。
「物理的意味です。勿論心的意味もあるでしょうけど――」
……笑満が咲桜に、『手を引かれた』、その瞬間。
俺も咲桜も、このときが笑満とは初対面だ。
だから、どうして笑満が宙に身体を放ったのか、とか、全然知らなかった。
咲桜は――もしかしたら本能的に危険を察知していたのかもしれない、ってくらいたまたまそこにいて、笑満の手を摑んだ。
笑満は転校前のことは一切話さなかった。
オトの存在も、事件のことも。
警察官の娘である咲桜とも、すんなり友達になった。
『転校前の学校で、友達関係でちょっと』、とだけ話したことがあった。
それが原因で人間不信っぽくなったこともあるんだ、と。
俺たちが出逢った笑満は、よく笑っていた。
俺しか友達がいなかった咲桜と友達になって――オマケで同級生と距離が出来てしまっても気にしないで――、咲桜と一緒に色々俺のストッパーになろうと画策してくれたりしていた。
けれど別に笑満は、『咲桜に助けられた』なんて思っていない。
それだけは、俺だけが言えることだ。
はっきりと。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
20
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる