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三 嫉妬
side作之助36
しおりを挟む「あ、はい。水都さんって呼んでます」
「水都の親の前だからそう呼んでいるのではなく?」
なおも水都さんの父様は壁に手をついてうなだれて、俺の方を見たりはしない。
「はい……日ごろから……」
呼び方が水都さんの父様の琴線に触れたんだろうか? 意味はわからないままだったけど、訊かれたことに答える。
「……水都は古閑くんのことは何と?」
「作之助」
答えたのは水都さん本人だ。水都さんの父様がじろっとした目つきで顔だけ動かして、水都さんを見た。
「お前由羽たちですら「くん」づけだろう」
「ちっちゃい頃の刷り込みだから今更直せないよ。作之助にそう呼ばれてるのは本当だからね? 父様の前だから、とかじゃなくて。呼び捨てでもいいって言ったことあるけどそのままだった」
「………」
水都さんが水都さんの父様を黙らせてしまった。
ちょっと揉めるだろうなあとは思っていたけど、こんな感じになるとは……。
俺、帰るタイミングがない。
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