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二 だったらそれは、
side流夜17
しおりを挟む「在義にとっちゃ娘ちゃんは、桃子が生きていた唯一の証拠だからな。だから娘ちゃんをなくせない。あれは娘バカでもあるが、嫁バカなんだよ」
「………そう、なんですか?」
咲桜の存在を通して、桃子さんがいたことを確認する。在義さんはそうやって生きているというのか?
「そうだよ。まあ、デフォでも普通よりは親バカだろうけどな。だから別に娘ちゃんを無視して桃子だけを追ってるとか、娘ちゃんに桃子を重ねてるわけじゃねえ。ちゃんと親父だよ。ただ、桃子は何もなさすぎるんだ。今はもう『娘ちゃんがいる』ってこと以外に、桃子が存在していた証拠がねーっつーかな。お前も、娘ちゃんと仲良くなることで恨まれたりしてねえだろ?」
「………」
結構怖い思いはしている気がする。
けれど、親しくすることを邪魔されたり恨まれたりはしていない。むしろ先ほどはアドバイスももらった。
……あれ、確かにそれって普通じゃないかもしれない。娘バカも普通じゃないけど。
「在義はあいつ、正義がてんでねえからな。ふつーの正義感持った奴だったら、娘と同じ学校の教師が付き合うつったら反対するだろ。……あいつはしねぇ」
「………」
はじめ――見合い事件の席では驚いていたけど、それを理由に反対することはなかった。
改めて思う、在義はただの『義』の人なのだと。
正義が全くない刑事。異端の刑事たる所以(ゆえん)。
「………あとはなんだ? 壁はお前の生まれのことか?」
「いや――俺のことはもういいんだ。自分でどうにかするから」
どこか、なにかが吹っ切れていた。恋人にしたい、と躊躇う理由が大きなものではない。
勿論、生徒と教師は変わらない。だから、すぐにではなくていい。
「……ただ、桃子さんは」
幼い咲桜の首に見えない傷痕をのこした生みの母。そして自分は……。
「桃子は寿命だ。娘ちゃんの記憶が混乱しているのは申し訳ないが、躊躇う理由は、桃子が手紙に残したそれだ。それを伝えるのは在義のタイミングでしかない」
「………」
寿命。
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