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二 だったらそれは、
side流夜10
しおりを挟む「咲桜に逢いたい……」
毎日来るのがお決まりの吹雪だけの部署で、項垂れながら呟いた。
最近は毎日咲桜が来てくれる。ついでに勉強も見てやっているから、負担だけにはさせていないと思いたいところだ。俺も、今まで付き合った人がいないわけではない。でも、自分から誰かの存在を望んだのは初めてだった。
傍にいてほしいと願う人。
咲桜を帰したあとは決まって気落ちする。それを振り切って、なんとか吹雪のところまで来ていた。のだが、今日はちょっと重症だった。なにせ咲桜を抱きしめて寝てしまうと言う、自分としては最高の思いをしてしまったのだから。
あー、なんで意識なかったんだろう……。
せめて咲桜を抱きしめている間、意識があったら。……寝込んでいたからこそ、咲桜はそのままでいてくれたのだろうけど。いや、もしもの話だ――。どんな話をしていたかな。咲桜が少しでも笑ってくれることを話せたらいい。笑って……あれ? 自分、大概怒らせてしかいないような気がしてきた……。
「なにやってんの。キモいんだけど」
冷徹な声が飛んできた。本気で考え込んでいるのをキモいって……吹雪は今日も通常運転だった。
「なに? 落ち込んで。咲桜ちゃん怒らせでもした?」
ファイルの端を肩に載せて、斜めに見てくる吹雪。相変わらず鋭いな。
「怒らせた……。眉間に拳喰らった」
「どんだけ怒らせたの!? あの子がそんなことするって! あー、それで落ち込んでるわけ? 仲直り出来てないって」
吹雪にしては珍しく、目を剥いて驚いていた。
「あ? いや、殴られて離れたら怒りは収まったようだ」
「殴られて離れた……? なに、流夜」
じとっとした瞳で見られた。あるいは軽蔑の視線。
「咲桜ちゃんに手ぇ出したわけ? 在義さんに殺されるよ」
「………」
即座に反論出来なかった。手を出した――のは本当だ。抱きついて抱きしめて抱き寄せたから。でも危険なことはない。……はずだ。
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