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side流夜3
しおりを挟む親戚をたらい回しにされて、龍生さんに引き取られて、龍生さんの実家のある天龍という土地で育って、全寮制の私立中学に入学するために上京して、在義さんと出逢って、咲桜と出逢って。
中学に入ってすぐ、自分の家の事件は解決した。
犯行は、当時高校生だった男四人による強盗殺人だった。
……自分の手で犯人を挙げて、何も、感じることがなかった。
そのときから俺は、自分に欠陥があると思うようになった。
人並みの『感覚』と『感情』が欠けているんじゃないか、と。
事件を追っているうちに、一つの可能性に気づいた。桃子さんの正体だ。
在義さんが保管していた桃子さんの遺品から検出されたDNAと、俺の毛髪と血液を検査にかけて、判明した。
桃子さんが記憶を失う前は、神宮美流子だったと。
戸籍上、俺と咲桜は、叔父と姪になってしまう、と。
だが、桃子さんが美流子だと気づく者はほかにはいないだろう。
在義さんと話して、この話は闇に葬ることにした。
咲桜は、在義さんと桃子さんの娘、華取咲桜。
俺は、神宮家の生き残り、神宮流夜。それだけで、いい、と。
だが、美流子は俺の姉だが、血の繋がった姉だが、本当の姉ではない。
遠縁の神宮家の娘で、俺が生まれる前に、うちへは養子に入っていたんだ。
従姉弟やはとこなんかよりもっと遠い血縁で、名前がつくような関係ではない。
咲桜を、在義さんの娘として、幼い頃から知っている子として可愛がっているうちはそれでよかった。
けれど、恋人になって、将来を望む関係になるのなら、黙っていてはいけない気がした。
……それを言う決心がつかなくて、また言っていいかも悩んで、在義さんに相談した。
咲桜が卒業するまで告白を待ってほしい、と時間稼ぎをしたのは、どうすれば咲桜に嫌われないように、嫌悪されないように伝えられるか、咲桜を手放さなくて済むように画策するためだった。
そんな姑息な企みも、咲桜の涙を見て泡と消えた。
流れた涙のあとを、両手で包む。
「……好きだよ、咲桜」
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