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四 うーに謝らせてくださいっ!
side総真1
しおりを挟む家に帰ると、僕を待っていたのはうーだった。
「おかえりなさい! 総真くん」
「ただいま、うー」
僕はごく自然にうーに「ただいま」と言っていた。
そして当然のようにうーを抱きしめ、その頭に自分の顎を乗せた。
「あー……。やっぱりうーは落ち着くなあ」
「ふふ、お疲れさま」
声まで笑みを含んだうーは、楽しそうだ。
「ねえねえ、総真くん」
「うん?」
「あのね?」
うーが小さく手招きしたので、僕は身をかがめてうーに耳を寄せた。
「………あの……」
「――――」
次に見たのは、見覚えのある天井だった。
……あ、そういえばリビングで寝たんだった……今日で何日目だっけ……え、今の……夢? 上体を起こして、半眼になった。
リビングで寝たのは僕だけだったはずなのに、ラグには想と美結がわざわざ布団を敷いて転がっていた。
……なにやってんだ、このバカ夫婦は。
……どうでもいいか。それより重要なのは今の夢だ。
……あれ? どんな夢だったっけ……。なんだかすごく意味のあることだった気がするんだけど……? ああなったらいいなあ、みたいな……。
「珍しい。総真が眠そうだ」
バカ夫婦は放ってさっさと支度をして家を出ると、途中で行き会った玲に驚かれた。
「あー、うん。寝たんだけど、うまく眠れなかったというか……」
「悪夢でもみた?」
「いや、むしろ幸せすぎる夢だった気がする……」
「よかったじゃん?」
「それが……なんかたくさん考えなきゃいけない感じで……」
「なんだそれ」
「俺にもよくわかんない……」
「そういや、今日だっけ? 羽咲ちゃんのテスト」
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