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3 誘惑
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しおりを挟む「では本日はここまでに致しましょう。そろそろ心護様が帰ってくる時間です。食事の準備が出来ましたら、またお伺いしますね」
「はい。では部屋で学校の課題などを」
応接間を勉強部屋として使っているので、琴理は聞いたことを書き留めた手帳を手に部屋に戻った。
ドアを閉めて、ふっと息を吐く。
「……クマ」
「おう? なんだどうした面白いな」
琴理に応じるように影から出てきた小鳥姿のクマ。
数字の八の字を横に描くように、羽をまったく動かさずに重力を無視した飛び方をしている。
琴理は険しい顔でクマを見る。
「あなた、何か話していないことあります?」
「あるに決まってんじゃねーか。なんで悪魔が全部話すと思ってる。性善説は悪魔にゃねーんだよ」
ケケケと笑いながら飛び続けるクマ。
「そもそも、何でおれがお前に全部話さなきゃなんねーんだ? お嬢様だからか? おう?」
「………」
琴理は黙った。
この小鳥の頭を掴んでぶん投げたい。
的確に言われると痛いところを突いてくるのは一体なんなんだ。
「……いえ、そういうことではないですね」
「んじゃあれ寄越せ。うまいやつ」
「………」
催促するように、クマが羽をちょいちょいと動かす。
琴理はジト目になってクマを見た。
(なんだかいつもあしらわれていて腹が立ってきましたね……)
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