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2 宮旭日の許嫁
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しおりを挟む「クマ……わたしの味方をしてくれるのですか?」
琴理が眉根を寄せて問えば、クマは吐き捨てる。
「はっ。それはねーな。娘が呪いにかかると俺にもかかっちまうから、不用意に呪いなんぞ受けんなよって言いに来ただけだ」
「それにしては先ほど……淋里様と話しているとき、黙っていてくれましたよね?」
「クマ実は優しい説ですか!?」
琴理の言葉に、涙子はびっくり声を出した。
クマが優しいかどうかはわからないが、今のところ琴理を害そうとはしてこないことが不思議ではあった。
「そうそう、おれ、優しいの。実はね?」
にこにこと、白々しい笑い方をするクマ。
しかし人間たちが反応する前に、その表情は醜悪なものに一変する。
「妄想もいいとこだ。愚物め。悪魔に優しさを要求すると、色んなモンが倍返しになるぜ、使用人」
けけけ、と笑ってクマは影に沈んでいった。
……妙な空気になってしまった。
琴理は額に手を当てる。
「……わたし、未だにクマの性格がつかめません……」
「つかむべきではありません、琴理様。我々が祓魔(ふつま)の性分(しょうぶん)であるないに関わらず、線引きは必要です」
詩の声はいつになく固かったが、それからこくりとうなずいた。
「ですが琴理様、録画していたのはよい判断でした。すべてではありませんが、画面に収められています」
「そうですよ琴理様! よくお思い付きになられましたね!」
重い空気を払拭するように、涙子が言った。
だが琴理はちょっと困った顔になる。
「ありがとうございます。……実は以前にもこういうことがありまして……あのとき、撮っておけばよかったなって思っていたことなんです」
「それは、具体的に訊いてもよろしいことですか?」
涙子の言葉に、琴理は眉を下げた。
「はい……わたししか見ていないので、確実にありました、という証拠はないのですが……、半年ほど前に、花園の家に宅配便がありまして、その荷物が、わたしが目を離した隙に消えてしまったのです」
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