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2 宮旭日の許嫁
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しおりを挟む(こういうとき、どういう反応をするのが正しいのでしょう……)
照れたり恥ずかしがったりする選択肢はもともと琴理にないので、①おほほ、と受け流す。➁そのようなことは……と謙遜する。③涙子さんはどうなんですか? のカウンター。
(……③にしましょう)
なんとなくで決めた。
「涙子さんは、いい方はいないのですか?」
「私ですか? 恋愛は自由にしていいと言われていますが、あまり興味はないですね」
「自身の恋愛に?」
「はい。心護様とその奥方様にお仕えするのが、私の人生の最大の目標だったのです」
「そ、そうなのですか……」
何故そこまで、と思ってしまった。それが顔に出ていたのか、
「お聞きになりますか?」
と訊かれた。
涙子が楽し気に言うので、琴理は「はい」とうなずいた。
「私は父がご当主様の執事という、側近の家系の中でも恵まれた環境に生まれました。私と主彦は幼い頃から、当たり前のように心護様のそばにいました」
懐かしそうに、愛おしそうに話す涙子。
その顔を見て琴理は思った。
(……はっ! これは涙子さんが心護様を想っていらっしゃるフラグ……!?)
「あ、私が心護様に密やかな想いを抱いているとかはありませんのでご安心ください。徹頭徹尾、心護様にお仕えする立場と気持ちですので」
「そ、そうですか……」
フラグ、あっさり折られた。
涙子が遠い場所を見るような眼差しになる。
「私の憧れは、奥様でした。琴歌さまの、見た目からは想像もつかないような力に助けられたことがありまして、圧倒されたのです。この奥様の息子様に仕えられるのは、私の特権だと思ったのです。そしていつか、心護様にも奥方様が現れる……性別的に、私は次代の奥様にお仕えできることになるのだとわかったとき、心は躍りました。そして間もなく心護様は琴理様との婚約を望まれるようになりました。心護様から聞く琴理様のお話は、私の原動力になりました。そして心護様について、琴理様のお姿をうかがう機会もありました」
「そうだったのですかっ? ごめんなさい、わたし……」
「言葉を交わしたわけでもないので、憶えていなくて当然ですよ。それに、琴理様がこの婚約に戸惑っていらっしゃるのは、はた目にもわかりましたから」
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