最強退鬼師の寵愛花嫁

桜月真澄

文字の大きさ
上 下
53 / 116
2 宮旭日の許嫁

23

しおりを挟む
心護の弱みにならないようにという教育も、琴理は受けてきた。

いざというときは、とも。

「琴理様……!」

涙子の声はまだ震えていたが、先ほどまでとは違う。

「心護様が心配してくださっているのなら、もっと気を付けるようにします。淋里様と二人きりにならないようにもします。……ほかに気を付けることはありますか?」

問われて、涙子は目元を拭った。

「はい。用事があって淋里様の離れにゆかれる際は、必ず心護様の離れの誰かを、供におつけください。おひとりではゆかれませぬように。母屋で逢われることがあって、その際そばに誰もいないときは口実を作ってすぐに人がいるところへ向かってください。淋里様がどのような嗜好をお持ちかはわかりませんが、念には念を入れて参りましょう」

「わかりました。何かと頼らせてもらいます」

「もちろんですっ。琴理様に頼りにしていただける私であるように、私は力を磨いて参りましたので!」

ぐっと、力こぶを作ってみせる涙子からは気迫が伝わってくる。

「ですが改めまして、琴理様に危険が及ぶ可能性がある判断をしてしまったこと、申し訳ございませんでした」

「わたしが残る提案をしたのはわたしです。あまり責めないでください。それに、まだ案内をしてもらえるのでしょう? 楽しみです」

「琴理様……はい! 今度は母屋までの道を歩きましょう。途中に何か所か四阿(あずまや)があります。来客の際に、お茶の席として使われることもあるのですよ」

「わあ、素敵ですね」

「はい。あ、もしお疲れになりましたら仰ってくださいね。休憩していきましょう」

「ええ、無理はしません」

涙子が普通を取り戻したことに安心して、琴理は歩き出した。



+++



母屋までの歩きのみの小路は何通りかあるらしく、涙子が案内してくれたのは桜沿いにつくられた小路だった。

「ご挨拶に行くときには見られなかった道です。桜が綺麗ですね……」

「はい。ほかの道は、心護様が案内してくださるそうです」

「心護様が? お忙しいのでは……」

「琴理様と二人きりになりたいのですよ」

内緒話をするように、こそっと言ってくる涙子。

「………」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

思い出してしまったのです

月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。 妹のルルだけが特別なのはどうして? 婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの? でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。 愛されないのは当然です。 だって私は…。

没落貴族とバカにしますが、実は私、王族の者でして。

亜綺羅もも
恋愛
ティファ・レーベルリンは没落貴族と学園の友人たちから毎日イジメられていた。 しかし皆は知らないのだ ティファが、ロードサファルの王女だとは。 そんなティファはキラ・ファンタムに惹かれていき、そして自分の正体をキラに明かすのであったが……

命を狙われたお飾り妃の最後の願い

幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】 重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。 イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。 短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。 『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

城内別居中の国王夫妻の話

小野
恋愛
タイトル通りです。

その忌み子は最上級の鬼に溺愛される

あなはにす
恋愛
「よろしく、花嫁様」 顔の大きな痣から忌み子と呼ばれ、なくなった両親からの愛情を頼りに生きてきた子爵令嬢花咲(カザキ)。領地では飢饉が起きそうになっていた。自分を厄介者扱いする継母は飢饉の原因を最上級と言われる笛吹きの鬼にすることにし、花咲は強引に鬼の嫁として差し出される。 鬼は長い黒髪をもち、ツノの生えた美しい青年の姿をしていた。鬼は花咲に興味がなく、食べようとする。しかし、両親の望む生を全うするために花咲は、笛吹きの鬼の本当の花嫁になることを申し出る。最初は鬼におびえる花咲だったが、二人は共同生活を通して少しずつ愛を知っていく。

美人な姉と『じゃない方』の私

LIN
恋愛
私には美人な姉がいる。優しくて自慢の姉だ。 そんな姉の事は大好きなのに、偶に嫌になってしまう時がある。 みんな姉を好きになる… どうして私は『じゃない方』って呼ばれるの…? 私なんか、姉には遠く及ばない…

私の大好きな彼氏はみんなに優しい

hayama_25
恋愛
柊先輩は私の自慢の彼氏だ。 柊先輩の好きなところは、誰にでも優しく出来るところ。 そして… 柊先輩の嫌いなところは、誰にでも優しくするところ。

処理中です...