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2 宮旭日の許嫁
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残念である。
絶対に口にはしないが。
「ま、まあ、詩さん、つきっきりは難しいと思うけど、琴理のことよろしく」
「万事心得ております。ご心配いりません」
「琴理、行って来る。でも、無理はしないように」
先ほどと似たような言葉を繰り返して、心護は出て行った。琴理は、「はい」と答え見送る。
琴理が詩を振り返ると、詩は合図のように手を合わせた。
「さて、琴理様。花園様からの荷物などは午前中に届くそうです。それまでは涙子に敷地内の案内をさせますね」
「お手数おかけします。よろしくお願いします」
「琴理様、お気遣いくださるのは嬉しいですが、あまりわたくしどもに畏まらなくて大丈夫ですよ」
詩に言われて、琴理ははっとした。
花園での琴理は学ぶ側だったので、教師に対して横柄な態度を取ったことはない。
詩が言ったのは、宮旭日で偉そうにしていろ、なんて意味では決してないが、自分を下げ過ぎるのもよくないのだ。
「はい。気を付けます。涙子さんを呼んできてもらえますか?」
「承知しました」
琴理は母屋から帰ってきたとき、一度部屋に戻って普段着に着替えている。
ロングスカートに、ブラウスとカーディガン姿だ。
このまま涙子に敷地内を案内してもらうつもりなので、玄関で待っていることにした。
(普通に考えても、炊事洗濯掃除などの家事に、心護様のスケジューリング、サポート、母屋のご当主夫妻様との連絡係に、ほかにもこまごましたことがありますよね。公一さんは心護様につきっきりのようだし、執事さんを含めて実質動けるのは四人……少数精鋭といえばそうですが、忙しすぎますね……。迷惑をかけないようにしましょう)
この離れにいる面々を思い出し、琴理は自分に誓った。
間もなく涙子がやってくる。昨日も思ったが、ここでの使用人の正装は、動きやすい和服らしい。
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