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2 宮旭日の許嫁
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しおりを挟む「鳴上様……宮旭日様の最側近の家系ですよね」
「はい。心護様には従兄がつく予定です」
ということは、将来的には琴理には涙子がつく予定なのだろう。
「あの、涙子さん、ひとつお願いしてもいいですか?」
「なんでも仰ってください」
頼られたことが嬉しかったのか、涙子の声は跳ねていた。
「その……心護様のことを教えてほしいのです」
「心護様のことを、ですか?」
だが琴理の言葉は予想外だったようで、ちょっと驚いている。
「はい……。長年許嫁でいましたが、心護様のことをよく知らないなと思いまして……」
琴理の申し訳なさそうな物言いに、涙子は納得だとばかりにうなずいた。
「そうですよね。心護様、琴理様のこと大好きなのに態度がおかしいと、こちらでも前々から問題になっておりましたし」
「問題になるくらいだったのですかっ?」
「はい。特に公一さまと詩さまは散々進言していたのですが、いつになっても話しかることすらされない、と、愚痴を言っておられました」
公一と詩には一番心配をかけていたらしい。
それで二人は、琴理に対して何かと気遣ってくれているのか。
琴理も、勝手に許嫁にされていい気分ではないのだろう、もしかしたら嫌われているかもしれない、とまで思っていた心護から、まさか一目惚れされていて、緊張のあまり話すことすら出来なかった、と言われたときは信じられなかったし、今も若干信じ切れていない。
ピュア過ぎるのでは? と。
許嫁になってから今までの間で、実は琴理にはひとつ懸念があった。
涙子は詩以外では唯一この離れにいる女性のようだし、訊いてみようと思った。
「その……心護様にはほかに好いている方がいらっしゃった……とかはありませんか?」
心護には誰か、心に思う人がいるのではないか、ということだ。
昨日の話を聞いてその可能性は薄まった気がしていたが、ずっと気になっていたことだった。
琴理のその質問に、涙子はばっと振り返ったと思ったら全力で首を横に振った。
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