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緑の紅玉
30.写真に映る宝石
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私たちの住むフラットへ向かう。
セイヤーズ警部と一緒にフラットについてきたのは、デヴィッド・リード警部補。マリアとも仕事を通じて付き合いがあるみたいで、結婚の報告をしにきた人だ。
フラットに帰るとスミスさんが出迎えてくれた。
一階のキッチンからは美味しそうな良い香りがする。
「パーティーのお客様にしては早いわね」
今夜は早めのクリスマスパーティの予定で、料理の仕上げをスミスさんがしている。セイヤーズ警部も先週までは非番だと言っていたので招待していた。
「パーティーの招待ありがとう。でも、仕事で欠席だ」
「あら、じゃあ持ち運べるようにお料理を詰めてくるわ」
「僕も手伝います」
セイヤーズ警部と目配せをしてリード警部補がキッチンへ向かったスミスさんの後をついていった。おそらく、妙なものを入れ込んでいないか確認するのだろう。スミスさんとは長い付き合いみたいだけれど、こういう警戒を怠らないところがプロフェッショナルって感じがする。
二階の共有スペースに行くとエーミルが部屋の飾り付けをしていた。共有スペースは大概マリアのもので溢れかえっているのだが、パーティをなんとかできる程度には物が片付けられている。そこへクリスマスのオーナメントやモールをせっせとエーミルが飾り付けている。
すっかりクリスマスムードだ。クリスマスツリーまで用意されている。
こういう事をやりそうにないエーミルが率先してやっているのには驚いた。後でマリアに聞いたら、ドラゴン族はキラキラした飾りが好きで自分の巣を飾りたてる修正があるんだそうだ。
なるほどね。
「あれ? ミトンは?」
「猫の集会よ。そろそろ時期だから」
猫の集会! 本当にあるんだ。行ってみたい。きっといろんな猫が集まってるんだろうなぁ。集会で何を話しているのかも気になる。
「適当に座って」
マリアがセイヤーズ警部に空いているソファを指した。わたしとマリアもその近くに座る。エーミルもちゃっかりマリアの隣に座っていた。
「昨日、肉屋へ買い物に行った時の事を順に話してくれ」
セイヤーズ警部に問われ、私は昨日何があったのかを思い出そうとした。
「確か、エーミルと一緒に今日のクリスマスパーティー用の七面鳥を買いに行ったの。予約していたからすぐに買えた。いつもあの時間だと同じバイトの子なんだけど、昨日は違ってて、繁盛してるんだって思った」
「なんで、繁盛してると?」
「初めて見るバイトの子だったし、バイトが入れ替わるほどシフトを多く入れてるのは繁盛しているからだし。それにちょっとお店も混んでいたわ」
「いつもはそこまで混んでいない?」
「人気店だからお客さんはいつもいるけど、クリスマス前だからたくさん来ていそうだった」
「応対したバイトはこの人?」
セイヤーズ警部が手にしていたバックからファイルを取り出して私に一枚の写真を見せた。スナップ写真で、友人たちと楽しそうに笑っている。
「そうね。この真ん中の人」
写真の中央で、満面の笑みで写っている。グループの中心人物といった雰囲気に見える。
「いつものバイトはこの人?」
セイヤーズ警部は、ファイルをめくってもう一枚の写真を見せる。こちらはカップルの写真でいつものバイトの子が女の子の肩に手を回して二人で寄り添って撮っている。カメラと被写体の距離が近いから自撮り写真のようだ。
「この男の子。暗算が得意でお客さんの注文品の合計をレジを使わずに答えてた」
結局レジを通さないといけないから、先にお客さんに値段だけ知らせていただけだったけど、正確に計算してくれると便利だったし。
「お店の様子でいつもと変わったところは?」
「無いわ。クリスマスだからか七面鳥が多いなと思ったぐらい」
クリスマスに七面鳥を食べる週間があるので、どこのお肉屋さんでもクリスマスの時期は七面鳥を大量に仕入れている。天井から七面鳥を吊るしているお店が多い。
「殺されたのは、このバイト?」
マリアは身を乗り出して一枚の写真を指し示した。私がいつも肉屋に行くとバイトをしている彼だ。セイヤーズ警部は何も答えない。
「Instagram のアカウントがある。彼、宝石を自慢している写真をアップしてから更新が途絶えている」
マリアは先ほどからずっと携帯を操作しているなと思っていたら、ネットで画像検索をしていたようだ。
Instagram には、バイトの子の自撮り写真やフード写真がたくさんアップされている中、更新日が一番最後の写真は親指ぐらいの大きさの宝石を握ってカメラに見せつけていた。
セイヤーズ警部と一緒にフラットについてきたのは、デヴィッド・リード警部補。マリアとも仕事を通じて付き合いがあるみたいで、結婚の報告をしにきた人だ。
フラットに帰るとスミスさんが出迎えてくれた。
一階のキッチンからは美味しそうな良い香りがする。
「パーティーのお客様にしては早いわね」
今夜は早めのクリスマスパーティの予定で、料理の仕上げをスミスさんがしている。セイヤーズ警部も先週までは非番だと言っていたので招待していた。
「パーティーの招待ありがとう。でも、仕事で欠席だ」
「あら、じゃあ持ち運べるようにお料理を詰めてくるわ」
「僕も手伝います」
セイヤーズ警部と目配せをしてリード警部補がキッチンへ向かったスミスさんの後をついていった。おそらく、妙なものを入れ込んでいないか確認するのだろう。スミスさんとは長い付き合いみたいだけれど、こういう警戒を怠らないところがプロフェッショナルって感じがする。
二階の共有スペースに行くとエーミルが部屋の飾り付けをしていた。共有スペースは大概マリアのもので溢れかえっているのだが、パーティをなんとかできる程度には物が片付けられている。そこへクリスマスのオーナメントやモールをせっせとエーミルが飾り付けている。
すっかりクリスマスムードだ。クリスマスツリーまで用意されている。
こういう事をやりそうにないエーミルが率先してやっているのには驚いた。後でマリアに聞いたら、ドラゴン族はキラキラした飾りが好きで自分の巣を飾りたてる修正があるんだそうだ。
なるほどね。
「あれ? ミトンは?」
「猫の集会よ。そろそろ時期だから」
猫の集会! 本当にあるんだ。行ってみたい。きっといろんな猫が集まってるんだろうなぁ。集会で何を話しているのかも気になる。
「適当に座って」
マリアがセイヤーズ警部に空いているソファを指した。わたしとマリアもその近くに座る。エーミルもちゃっかりマリアの隣に座っていた。
「昨日、肉屋へ買い物に行った時の事を順に話してくれ」
セイヤーズ警部に問われ、私は昨日何があったのかを思い出そうとした。
「確か、エーミルと一緒に今日のクリスマスパーティー用の七面鳥を買いに行ったの。予約していたからすぐに買えた。いつもあの時間だと同じバイトの子なんだけど、昨日は違ってて、繁盛してるんだって思った」
「なんで、繁盛してると?」
「初めて見るバイトの子だったし、バイトが入れ替わるほどシフトを多く入れてるのは繁盛しているからだし。それにちょっとお店も混んでいたわ」
「いつもはそこまで混んでいない?」
「人気店だからお客さんはいつもいるけど、クリスマス前だからたくさん来ていそうだった」
「応対したバイトはこの人?」
セイヤーズ警部が手にしていたバックからファイルを取り出して私に一枚の写真を見せた。スナップ写真で、友人たちと楽しそうに笑っている。
「そうね。この真ん中の人」
写真の中央で、満面の笑みで写っている。グループの中心人物といった雰囲気に見える。
「いつものバイトはこの人?」
セイヤーズ警部は、ファイルをめくってもう一枚の写真を見せる。こちらはカップルの写真でいつものバイトの子が女の子の肩に手を回して二人で寄り添って撮っている。カメラと被写体の距離が近いから自撮り写真のようだ。
「この男の子。暗算が得意でお客さんの注文品の合計をレジを使わずに答えてた」
結局レジを通さないといけないから、先にお客さんに値段だけ知らせていただけだったけど、正確に計算してくれると便利だったし。
「お店の様子でいつもと変わったところは?」
「無いわ。クリスマスだからか七面鳥が多いなと思ったぐらい」
クリスマスに七面鳥を食べる週間があるので、どこのお肉屋さんでもクリスマスの時期は七面鳥を大量に仕入れている。天井から七面鳥を吊るしているお店が多い。
「殺されたのは、このバイト?」
マリアは身を乗り出して一枚の写真を指し示した。私がいつも肉屋に行くとバイトをしている彼だ。セイヤーズ警部は何も答えない。
「Instagram のアカウントがある。彼、宝石を自慢している写真をアップしてから更新が途絶えている」
マリアは先ほどからずっと携帯を操作しているなと思っていたら、ネットで画像検索をしていたようだ。
Instagram には、バイトの子の自撮り写真やフード写真がたくさんアップされている中、更新日が一番最後の写真は親指ぐらいの大きさの宝石を握ってカメラに見せつけていた。
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