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第十四話 神様ってやつは……
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「じゃーあああああああん! またまた来ましたよぉ~ん、神様ですよーん」
きらきらりん! というオルゴールが鳴るような可愛らしい効果音と共に、抱き合うわたくしと殿下の真横に出現した自称神様。それを横目で見ながら、殿下が鷲づかみする。
「ぐえっ! か、神様を鷲づかみするなん、てっ!」
「なんだ、お前は」
鋭い視線で神様を睨みつける殿下に慌ててわたくしは身体が入れ替わった経緯を説明する。
「ほぉ……お前のせいだったのか、このおかしな現象は」
「うーわ、恐いわぁ~。神様をお前呼ばわりする人間なんて初めてだわー」
ようやく殿下の手から逃れられた神様は、わたくし達の周りをふよふよと漂いながら乱れた衣装を整えている。
「それで、何で戻れたの? まだ条件をクリアしてないと思うんだけど」
「戻れたのに嬉しくないの? もっ回、入れ替えとく?」
「笑えない冗談はおやめになって! もう二度とごめんですわ」
殿下はまだ、腕を組みながらいぶかしげに神様を見ている。
「あぁ、あの条件はただのおふざけよ」
「え?」
「そもそも身体を入れ替えるなんて事してないもの。互いの姿に見える様に変身魔法をかけただけ」
「な、なんですって……」
わたくしは眩暈で倒れそうになった。それをイーロイズ殿下が支えて下さる。
「そろそろ、その魔法の効果が切れてきたから自然に元の姿に戻ったって訳よ」
「じゃあ今頃リアノラも……」
「そうね、あっちは昨夜戻ってるわ」
自称神様はそう言ってウインクをした。そういえば今日、リアノラの姿を学園で見なかった。
「なんでこんな事をしたんだ」
イーロイズ殿下は神様に問いただした。
「えー? ちょっとした暇つぶし……ぐごっ」
再びイーロイズ殿下の手に掴まれる神様。……て、こんなんで本当に神様なんだろうか。
「あんまりにも二人が喧嘩ばっかりしてるから、少しお灸をすえてやりたくなっただけ。これに懲りたらもう、あんなイザコザ起こさない事ね」
「あれはリアノラのせいですわ……わたくしは別に……」
「あなたも自分の気持ちに素直じゃなかったじゃない。でも良かったわね、めでたく両想いになれて」
神様の言葉に、殿下と顔を見合す。……そうだった、わたくし殿下に好きって言ってしまったんだった。顔を赤らめたわたくしの耳元に神様はこそっ、と耳打ちして来た。
「もう婚約破棄も断罪もされないから安心していいわよ。ヒロインは舞台から退場したからね」
「……!?」
驚いて神様を見ると、悪戯が成功した子供の様な笑みを浮かべている。……やっぱりこの世界はゲームの世界なんだわ。
きらきらりん! というオルゴールが鳴るような可愛らしい効果音と共に、抱き合うわたくしと殿下の真横に出現した自称神様。それを横目で見ながら、殿下が鷲づかみする。
「ぐえっ! か、神様を鷲づかみするなん、てっ!」
「なんだ、お前は」
鋭い視線で神様を睨みつける殿下に慌ててわたくしは身体が入れ替わった経緯を説明する。
「ほぉ……お前のせいだったのか、このおかしな現象は」
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ようやく殿下の手から逃れられた神様は、わたくし達の周りをふよふよと漂いながら乱れた衣装を整えている。
「それで、何で戻れたの? まだ条件をクリアしてないと思うんだけど」
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「笑えない冗談はおやめになって! もう二度とごめんですわ」
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「そうね、あっちは昨夜戻ってるわ」
自称神様はそう言ってウインクをした。そういえば今日、リアノラの姿を学園で見なかった。
「なんでこんな事をしたんだ」
イーロイズ殿下は神様に問いただした。
「えー? ちょっとした暇つぶし……ぐごっ」
再びイーロイズ殿下の手に掴まれる神様。……て、こんなんで本当に神様なんだろうか。
「あんまりにも二人が喧嘩ばっかりしてるから、少しお灸をすえてやりたくなっただけ。これに懲りたらもう、あんなイザコザ起こさない事ね」
「あれはリアノラのせいですわ……わたくしは別に……」
「あなたも自分の気持ちに素直じゃなかったじゃない。でも良かったわね、めでたく両想いになれて」
神様の言葉に、殿下と顔を見合す。……そうだった、わたくし殿下に好きって言ってしまったんだった。顔を赤らめたわたくしの耳元に神様はこそっ、と耳打ちして来た。
「もう婚約破棄も断罪もされないから安心していいわよ。ヒロインは舞台から退場したからね」
「……!?」
驚いて神様を見ると、悪戯が成功した子供の様な笑みを浮かべている。……やっぱりこの世界はゲームの世界なんだわ。
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