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番外編

リップル王女の恋物語 ジャスティンSide①

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 コンフォーネ王国へと一年間の留学をしに来た私は、国王陛下から第一王女であるリップル王女を紹介される為謁見の間に居た。彼女はこれから私が入学する学園に通っているとの事で、学園内でなにかとお世話になるかもしれない。彼女の到着を待っていると、大きな扉が開いてふわふわとした金色の髪の少女が入って来た。

「お待たせ致しました……っ!」

 少女は私の顔を見た途端、元々大きなその瞳を更に大きく見開いた。深いグリーンの瞳と私は数秒見つめ合う形となる。腰近くまである金色のふわふわとした長い髪、長い睫毛、陶器のように白くきめ細やかなその肌、ふっくらとした柔らかそうな頬、形の良いぷっくりとした小さな唇……たった数秒なのに私はそれがとても長い時間のように感じた。

 ――まるで人形のように美しい。これほど美しい女性を私は見た事がない。思わず喉がゴクリと鳴った。

「ジャスティン王子、これから学園生活を共にする第一王女のリップルだ」

 コンフォーネ王国の国王陛下が改めてリップル王女を紹介してくれる。私は彼女に見惚れている事を悟られないように、平静を装って挨拶をした。

「初めまして、リップル王女。私はサズレア王国第三王子のジャスティンです」
「あ……っ、うっ……り、リップルです……」

 リップル王女はすぐに俯いてしまって、その美しい顔を見せてくれなくなった。……何か失態を犯しただろうか。私は頭の中で自分の言動を振り返る。いや、何もしていない……と思うのだが。うーん。

 滞在中に用意された部屋へと戻った後、私はリップル王女の姿を思い浮かべてその余韻に浸っていた。

「はぁっ…………」

 大きな溜息を漏らすと、護衛兼側近として付いて来たテオドール・ナッシュが眉をひそめた。

「長旅でお疲れですか、殿下」
「あ、いや。それは大丈夫だ」

 サズレア王国からコンフォーネ王国へは海を船で渡り、更に港から数日ほど馬車を走らせた距離ではあるが途中で休憩も取っているし、さほど疲れは残ってはいない。

「なぁ、テオ。王女を見てどう思った」
「リップル第一王女殿下ですか? ……とても綺麗なお方ですね」
「だろう? 私は彼女が欲しい。どうにかして婚姻を結べないだろうか」
「本気ですか!? しかし……まずは婚約者が居るか調べてみませんと」
「そうだな……」

 私は自国から連れて来た侍女を部屋へ呼び、こっそりとリップル王女の事を調べさせる事にした。そして翌日、互いの親睦を深める為にと用意されたリップル王女との茶会で仲良くなろうと試みたのだが……彼女は私に興味がないのか何を話しても「はい」「そうですわね」と無難な返答を返してくるばかり。しかも始終、俯いている。

 私以外の者と話している時は相手の顔を見て微笑んだり表情を変えて会話されているのに、何故か私と話す時はいつも俯いて顔を見せようとしてくれない。学園内だけでなく王城内で彼女を見掛ける度に、頑張って話し掛けても彼女はすぐに逃げていってしまう。

「……な、何故なんだ。私は嫌われているのだろうか」

 コンフォーネ王国に滞在中は部屋で頭を抱えて項垂れる毎日を送っていた。幸いにも彼女には婚約者は居ない。少しでも好意を抱いてくれたなら、婚約の話を持ちだせるかもしれないのに。あんなに避けられてしまっては、無理だ。

「私の何処が悪いのだろうか……まさか、顔……か?」

 初対面から顔を合わせて貰えなかった事を思い出す。最初は目が合った。でもそのすぐ後から、私を見てはくれなくなった。という事は、この顔が目に入れるのも苦痛になるくらいに好みではないのか?

「いやそんな、まさか。殿下の顔を嫌う女性が居るとは思いませんが」

 テオがフォローを入れてくれる。今まで自国でも、私を避けるような女性は居なかった。第三王子という立場を除外したとしても、ロブ兄上には負けるがそんなに酷い容姿ではないと自負していたのだが……。

「殿下? おーい、大丈夫ですか? まさかご自分が不細工だとか思ってませんよね!? 違いますからね、本当にそれは違いますよ。世間では殿下は、ちゃんと美少年と認識されてますよー」
「……そ、そうだろうか」
「そのお顔で不細工だなんて思われたら、世の男性の殆どから怒られますよ」
「そうか……」

 結局リップル王女とは距離を縮める事も出来ぬまま、勿論婚約の話なんて出来ず……留学期間が終わってしまった。そして自国へと帰って暫くした後、今度は衝撃の出来事が起こる。
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