27 / 54
本編
プリメラのパン屋さん
しおりを挟む
「覚悟決めたんですね」
プリメラのパン屋を訪ねたわたしに、キラキラとした瞳を大きく見開いて自分の事の様に喜んで見せるプリメラ。
「ええ。あとは頑張るしかないんだけどね」
「王太子妃の試練か~うー、アレはまじキツイわぁ。それもここだと実体験する訳だし……無理無理」
「……そんなにヤバイの?」
プリメラはゲームでの記憶を思い出したのか、両手を頬に当ててイヤイヤと首を振っている。そして眉を下げてポツリポツリと話し始める。
「んっと……取り敢えず、魔力がある事で一つ目はクリアです」
「やっぱり魔法とか関係あるのね」
「何て言ったら良いのかなぁ~……仮想空間? みたいな所に放り込まれてですねぇ」
「仮想空間……」
「んで、色々試されちゃうんです! 肉体的というよりも、精神的な面ですかねぇ。王太子妃に相応しい資質を持っているかどうかってヤツです」
プリメラの説明ではいまいちピンと来ない。大変な事だけは分かるのだけど……。
「今の内に何かやっておいた方が良い事とかってある?」
「いや、無いですね~。もう、本人のこれまでの経験と資質の問題なので」
「そうなのね」
「あ、でもこれだけは忘れないで下さい。自分の心に嘘をついてはダメです。ついてもバレちゃいますし」
「分かったわ」
わたしはプリメラにお礼を言うと、次の話を始めた。今日の本題はこちらだ。
「プリメラさんにお願いがあって今日は来たの」
「なんですか?」
「ここのパンをウチの店に仕入れさせて貰えないかしら?」
「え、パンですか?」
「ええ、こちらのロールパンがとても美味しいから是非ウチの店でも出したいの」
「おお、業務提携ってやつですね! 面白そうですねっ」
プリメラがご主人のお父様である店主を呼び寄せて、話をすると驚かれたけど快く引き受けて貰える事になった。これでわたしが店に来れなくなっても、ロマノは料理だけに集中出来る。パンを焼くのも楽しかったけれど、それに時間を取られてしまっては本末転倒だもの。
◆◇◇◇ ◇◇◇◇ ◇◇◇◆
邸へ戻ると執事長から手紙を受け取った。封蝋を見ると隣国コンフォーネ王国王家の紋章だ。……リップル王女から? 急いで封を開けると、コンフォーネ王国王家の紋章の透かしが入ったとても上等な便箋が入っていた。中の文章を恐る恐る読んでみると、それはお茶会のお誘いの手紙だった。
リップル王女かぁ……。以前お会いした時の事を思い出す。確か第一王子……今は王太子様のイーロイズ殿下の事が大好きで、いつも付いて回っていたわね。少し幼い面はあったけど、意地悪とかする様なお方ではなかった。ただ、一対一でお話した事はまだ無いのよね。
先日の舞踏会でも、お互いの顔は見合わせただけで会話はしていない。まさかこんな形でリップル王女と関わる事になるとは思ってもみなかったよね。彼女はロブ殿下の事をどう思っているのだろう。勿論ロブ殿下とも初対面ではないだろうし……。リップル王女側もわたしの事を警戒されてるかもしれないなぁ……。
プリメラのパン屋を訪ねたわたしに、キラキラとした瞳を大きく見開いて自分の事の様に喜んで見せるプリメラ。
「ええ。あとは頑張るしかないんだけどね」
「王太子妃の試練か~うー、アレはまじキツイわぁ。それもここだと実体験する訳だし……無理無理」
「……そんなにヤバイの?」
プリメラはゲームでの記憶を思い出したのか、両手を頬に当ててイヤイヤと首を振っている。そして眉を下げてポツリポツリと話し始める。
「んっと……取り敢えず、魔力がある事で一つ目はクリアです」
「やっぱり魔法とか関係あるのね」
「何て言ったら良いのかなぁ~……仮想空間? みたいな所に放り込まれてですねぇ」
「仮想空間……」
「んで、色々試されちゃうんです! 肉体的というよりも、精神的な面ですかねぇ。王太子妃に相応しい資質を持っているかどうかってヤツです」
プリメラの説明ではいまいちピンと来ない。大変な事だけは分かるのだけど……。
「今の内に何かやっておいた方が良い事とかってある?」
「いや、無いですね~。もう、本人のこれまでの経験と資質の問題なので」
「そうなのね」
「あ、でもこれだけは忘れないで下さい。自分の心に嘘をついてはダメです。ついてもバレちゃいますし」
「分かったわ」
わたしはプリメラにお礼を言うと、次の話を始めた。今日の本題はこちらだ。
「プリメラさんにお願いがあって今日は来たの」
「なんですか?」
「ここのパンをウチの店に仕入れさせて貰えないかしら?」
「え、パンですか?」
「ええ、こちらのロールパンがとても美味しいから是非ウチの店でも出したいの」
「おお、業務提携ってやつですね! 面白そうですねっ」
プリメラがご主人のお父様である店主を呼び寄せて、話をすると驚かれたけど快く引き受けて貰える事になった。これでわたしが店に来れなくなっても、ロマノは料理だけに集中出来る。パンを焼くのも楽しかったけれど、それに時間を取られてしまっては本末転倒だもの。
◆◇◇◇ ◇◇◇◇ ◇◇◇◆
邸へ戻ると執事長から手紙を受け取った。封蝋を見ると隣国コンフォーネ王国王家の紋章だ。……リップル王女から? 急いで封を開けると、コンフォーネ王国王家の紋章の透かしが入ったとても上等な便箋が入っていた。中の文章を恐る恐る読んでみると、それはお茶会のお誘いの手紙だった。
リップル王女かぁ……。以前お会いした時の事を思い出す。確か第一王子……今は王太子様のイーロイズ殿下の事が大好きで、いつも付いて回っていたわね。少し幼い面はあったけど、意地悪とかする様なお方ではなかった。ただ、一対一でお話した事はまだ無いのよね。
先日の舞踏会でも、お互いの顔は見合わせただけで会話はしていない。まさかこんな形でリップル王女と関わる事になるとは思ってもみなかったよね。彼女はロブ殿下の事をどう思っているのだろう。勿論ロブ殿下とも初対面ではないだろうし……。リップル王女側もわたしの事を警戒されてるかもしれないなぁ……。
12
お気に入りに追加
4,170
あなたにおすすめの小説
88回の前世で婚約破棄され続けて男性不信になった令嬢〜今世は絶対に婚約しないと誓ったが、なぜか周囲から溺愛されてしまう
冬月光輝
恋愛
ハウルメルク公爵家の令嬢、クリスティーナには88回分の人生の記憶がある。
前世の88回は全てが男に婚約破棄され、近しい人間に婚約者を掠め取られ、悲惨な最期を遂げていた。
彼女は88回の人生は全て自分磨きに費やしていた。美容から、勉学に運動、果てには剣術や魔術までを最高レベルにまで極めたりした。
それは全て無駄に終わり、クリスは悟った。
“男は必ず裏切る”それなら、いっそ絶対に婚約しないほうが幸せだと。
89回目の人生を婚約しないように努力した彼女は、前世の88回分の経験値が覚醒し、無駄にハイスペックになっていたおかげで、今更モテ期が到来して、周囲から溺愛されるのであった。しかし、男に懲りたクリスはただひたすら迷惑な顔をしていた。
婚約破棄を望む伯爵令嬢と逃がしたくない宰相閣下との攻防戦~最短で破棄したいので、悪役令嬢乗っ取ります~
甘寧
恋愛
この世界が前世で読んだ事のある小説『恋の花紡』だと気付いたリリー・エーヴェルト。
その瞬間から婚約破棄を望んでいるが、宰相を務める美麗秀麗な婚約者ルーファス・クライナートはそれを受け入れてくれない。
そんな折、気がついた。
「悪役令嬢になればいいじゃない?」
悪役令嬢になれば断罪は必然だが、幸運な事に原作では処刑されない事になってる。
貴族社会に思い残すことも無いし、断罪後は僻地でのんびり暮らすのもよかろう。
よしっ、悪役令嬢乗っ取ろう。
これで万事解決。
……て思ってたのに、あれ?何で貴方が断罪されてるの?
※全12話で完結です。
変態婚約者を無事妹に奪わせて婚約破棄されたので気ままな城下町ライフを送っていたらなぜだか王太子に溺愛されることになってしまいました?!
utsugi
恋愛
私、こんなにも婚約者として貴方に尽くしてまいりましたのにひどすぎますわ!(笑)
妹に婚約者を奪われ婚約破棄された令嬢マリアベルは悲しみのあまり(?)生家を抜け出し城下町で庶民として気ままな生活を送ることになった。身分を隠して自由に生きようと思っていたのにひょんなことから光魔法の能力が開花し半強制的に魔法学校に入学させられることに。そのうちなぜか王太子から溺愛されるようになったけれど王太子にはなにやら秘密がありそうで……?!
※適宜内容を修正する場合があります
【完結】転生したので悪役令嬢かと思ったらヒロインの妹でした
果実果音
恋愛
まあ、ラノベとかでよくある話、転生ですね。
そういう類のものは結構読んでたから嬉しいなーと思ったけど、
あれあれ??私ってもしかしても物語にあまり関係の無いというか、全くないモブでは??だって、一度もこんな子出てこなかったもの。
じゃあ、気楽にいきますか。
*『小説家になろう』様でも公開を始めましたが、修正してから公開しているため、こちらよりも遅いです。また、こちらでも、『小説家になろう』様の方で完結しましたら修正していこうと考えています。
森に捨てられた令嬢、本当の幸せを見つけました。
玖保ひかる
恋愛
[完結]
北の大国ナバランドの貴族、ヴァンダーウォール伯爵家の令嬢アリステルは、継母に冷遇され一人別棟で生活していた。
ある日、継母から仲直りをしたいとお茶会に誘われ、勧められたお茶を口にしたところ意識を失ってしまう。
アリステルが目を覚ましたのは、魔の森と人々が恐れる深い森の中。
森に捨てられてしまったのだ。
南の隣国を目指して歩き出したアリステル。腕利きの冒険者レオンと出会い、新天地での新しい人生を始めるのだが…。
苦難を乗り越えて、愛する人と本当の幸せを見つける物語。
※小説家になろうで公開した作品を改編した物です。
※完結しました。
悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます
久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。
その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。
1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。
しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか?
自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと!
自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ?
ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ!
他サイトにて別名義で掲載していた作品です。
【コミカライズ決定】地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~
胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。
時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。
王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。
処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。
これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。
【短編】隣国から戻った婚約者様が、別人のように溺愛してくる件について
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
転生したディアナの髪は老婆のように醜い灰色の髪を持つ。この国では魔力量の高さと、髪の色素が鮮やかなものほど賞賛され、灰や、灰褐色などは差別されやすい。
ディアナは侯爵家の次女で、魔力量が多く才能がありながらも、家族は勿論、学院でも虐げられ、蔑まされて生きていた。
親同士がより魔力の高い子を残すため――と決めた、婚約者がいる。当然、婚約者と会うことは義務的な場合のみで、扱いも雑もいい所だった。
そんな婚約者のセレスティノ様は、隣国へ使節団として戻ってきてから様子がおかしい。
「明日は君の誕生日だったね。まだ予定が埋まっていないのなら、一日私にくれないだろうか」
「いえ、気にしないでください――ん?」
空耳だろうか。
なんとも婚約者らしい発言が聞こえた気がする。
「近くで見るとディアナの髪の色は、白銀のようで綺麗だな」
「(え? セレスティノ様が壊れた!?)……そんな、ことは? いつものように『醜い灰被りの髪』だって言ってくださって構わないのですが……」
「わ、私は一度だってそんなことは──いや、口には出していなかったが、そう思っていた時がある。自分が浅慮だった。本当に申し訳ない」
別人のように接するセレスティノ様に困惑するディアナ。
これは虐げられた令嬢が、セレスティノ様の言動や振る舞いに鼓舞され、前世でのやりたかったことを思い出す。
虐げられた才能令嬢×エリート王宮魔術師のラブコメディ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる