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本編

市場……輸入品店

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 卒業パーティを終えて、ようやく事業の手伝いを本格的に出来る様になった。わたしはお姉さまと一緒に新店舗の確認作業に来ていた。建て替え工事も終わって真新しくなった店は一階が店舗、二階には従業員の更衣室や休憩室などが設けられている。他にも寝泊まりの出来る空き部屋も幾つかあり、オープニング準備でここに泊まり込んで作業する事も可能だ。

 今迄カフェとして営業していた店は、今回のリニューアルにより新たに庶民向けの定食屋としてオープンする事に決まった。最近は王都にカフェが乱立しており同じカフェで勝負しても良かったのだが、わたしの料理を見たグレン様が料理をメインにした店にしてはどうかと言われた。それなら定食屋というジャンルで客寄せをしたらどうかと、わたしは提案してみた。ネリネ侯爵家では初の試みだ。上手く行けば、地方にも支店を出店していけるかもしれない。

「今日は市場へ必要なものを買い出しに行って来てね」

 お姉さまは他の業者や従業員の面接対応があるので、わたしが侍女のベッキーと共に市場で買い物を担当する事になった。お姉さまから買い物代を預かり、わたしは市場へと向かった。

 こうしてオープニングに携わらせて貰う事が決定してから幾度か市場へは来ていた。市場を回っていて思った事は、やはりこの世界は乙女ゲームかラノベの世界なんじゃないかという事だ。前世での、しかも日本でよく目にしていた調味料や食材がとにかく多い。ただ和風な調味料に関しては、街の外れにある輸入品を取り扱っているお店だけが販売していた。恐らくこの国では、一般的には普及していないのだろう。

 西洋風なこの国と違って、遠い海の果てにある異国には日本を彷彿とさせる国もあるらしい。そこからの輸入品として、米や味噌などの食材が少量だが売られていて……この間はポケットマネーで思わず買ってしまった。久し振りに食べたお米……マジで美味しかった。

「この味噌は大量に仕入れする事って可能ですか?」
「うーん、その国の品は色々と輸入が難しくてね。ここにある分だけでも苦労して仕入れたんだよ」

 店主の言葉に少しガッカリする。お米はある程度は仕入れ可能だが、味噌はなかなか手に入らないらしい。取り敢えず、今店にある全ての味噌は買い上げ、使えそうな幾つかの調味料、そして精米済の米と、精米時に出たぬかも一緒に店の方へ配達して貰う様お願いした。米はこの店で精米しているんだそうだ。今後も味噌が仕入れ出来た場合は優先的に購入出来る様に約束を取り付ける。

 ぬかがあれば、漬物を作れる。ぬか漬け大好きだったのよね~ああ、楽しみだわ。ぬか漬けだけなじゃく、浅漬けも作ろうかなぁ。前世で炊き立てご飯と一緒に食べた浅漬けの味を思い出し、こっそり喉をごくりと鳴らす。

 味噌を手に入れる事は出来たけど、ただこれでは確実に味噌を使い続ける事が出来るか分からない。……となると、自分で味噌も作った方が良いかもしれない?

「次は、野菜を見に行こうかな」
「はいお嬢様」

 まずは味噌の材料となる大豆が売っているのかを確かめたい。漬物に合う野菜も見繕いたいし、野菜は色々あった方が彩りも鮮やかになるので積極的に取り入れたい食材だ。
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