悪役令嬢に転生かと思ったら違ったので定食屋開いたら第一王子が常連に名乗りを上げてきた

咲桜りおな

文字の大きさ
4 / 54
本編

王都を散策

しおりを挟む
 貴族街を抜けてすぐに広がる王都の街はとても活気にあふれている。大小さまざまな商店が建ち並び、更には路肩には幾つもの露店が軒を連ねている。隣町には港もある事から、新鮮な魚介類も手に入りやすい。そんな街並みを侍女のベッキーと一緒に見てまわる。

 仕事を探す……とは言ってみたものの、一体なにの仕事を探せば良いのか。せっかく異世界なのだから、それらしい事をしてみたい気もする。となると、冒険者? それならギルドに登録をして依頼をこなすという手もあるけど……一応魔法は人並みには使えるけど、それほど得意という訳でもない。というか、運動神経があまりよろしくない。

「冒険者は向いてなさそうよね……」

 自分に出来そうな事って何だろう。普段は貴族令嬢としての生活しかして来なかったからなぁ。刺繍は出来るけど、あまり得意でもない。あとは、読書をしてるか、たまに邸の厨房を借りてお菓子を作らせて貰ったりしたくらいだ。

「料理……か」

 そういえば、料理は前世でもやっていた。特別、料理が得意だったという訳ではないけど母親が料理上手な人だったお陰で人並みには作れていた。付き合っていた彼氏とかにも美味しいって言って貰えてたなぁ。でも、プロの料理人という訳ではない。果たしてそんな腕で仕事として成立するのだろうか。

 ふと、足を止めて周りを見渡す。王都に並ぶ幾つかのレストランやカフェには入った事があるけど、味はどうだったかしら。この世界の料理は調理方法が何故か少なくて、シンプルに焼く・煮る……といった調理方法が殆どだ。なので味も質素でコクや旨味、そして何よりパンチがない。

 食材は前世にあったものをベースに、この異世界独自の変わった食材も流通している。だからこそ余計に、ここがゲームの中とかじゃないのかと疑っていたのだけれどね。実際はヒロインも居なくて、わたしも悪役令嬢ではなかったみたいだから、ちょっと安心したのは事実。

 試しに目についたレストランに入り、店主に料理人の募集はしていないかと聞いてみた。普段より質素なワンピースを身に着けて来たけど、店主は怪訝そうにわたしの姿を一瞥して見た。貴族だとは思われないかもだけど、裕福な家庭の子供だとは思われてそうだ。思った通り、その場で断られてしまった。

 少し項垂れながら、外で待たせていたベッキーの元へと戻る。

「お嬢様、さきほどから一体何をしておいでなのですか?」

 特に買い物をする訳でも無く、ただ街を歩き回り、食事をすることも無くレストランから出てきたわたしに首を傾げる。

「うーん、実は仕事を探してみようかと思って……」

 わたしの言葉にベッキーが目を見開いて驚く。

「何がどうなって、そんな行動になっているのですかっ!」

 ベッキーに怒られながら、事の経緯を話すわたし。するとベッキーは呆れた顔をした。

「なにも市井におりなくても、お嬢様ならきっと素敵な殿方から婚約のお話が来ますよ!」
「だって……なんだか疲れちゃったんだもの。今は誰かと結婚だなんて考えたくないわ」
「だからと言って、ご自分で仕事を探されなくても……どうしてもとおっしゃるのなら、侯爵様に相談されてはいかがですか?」
「お父様に?」
「例えば領地経営のお手伝いをなさるとか、侯爵家で展開している事業の一つをお手伝いなさるとか。色々と手は御座いますでしょうに」
「うーん……」

 ベッキーに言われて、我が侯爵家の事業内容を思い出す。確かファッションブランドが一つ、それからカフェやレストランも幾つか経営していた様な気がする。確か王都にもカフェが一つあったわね。

「ちょっと見に行ってみましょう、ベッキー」

 わたしは侯爵家が経営しているカフェのある場所へ向かって歩き出した。
しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

「僕が望んだのは、あなたではありません」と婚約破棄をされたのに、どうしてそんなに大切にするのでしょう。【短編集】

長岡更紗
恋愛
異世界恋愛短編詰め合わせです。 気になったものだけでもおつまみください! 『君を買いたいと言われましたが、私は売り物ではありません』 『悪役令嬢は、友の多幸を望むのか』 『わたくしでは、お姉様の身代わりになりませんか?』 『婿に来るはずだった第五王子と婚約破棄します! その後にお見合いさせられた副騎士団長と結婚することになりましたが、溺愛されて幸せです。 』 『婚約破棄された悪役令嬢だけど、騎士団長に溺愛されるルートは可能ですか?』 他多数。 他サイトにも重複投稿しています。

悪役令嬢は推し活中〜殿下。貴方には興味がございませんのでご自由に〜

みおな
恋愛
 公爵家令嬢のルーナ・フィオレンサは、輝く銀色の髪に、夜空に浮かぶ月のような金色を帯びた銀の瞳をした美しい少女だ。  当然のことながら王族との婚約が打診されるが、ルーナは首を縦に振らない。  どうやら彼女には、別に想い人がいるようで・・・

婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています

由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、 悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。 王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。 だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、 冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。 再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。 広場で語られる真実。 そして、無自覚に人を惹きつけてしまう リリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。 これは、 悪役令嬢として断罪された少女が、 「誰かの物語の脇役」ではなく、 自分自身の人生を取り戻す物語。 過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、 彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。

モブ令嬢アレハンドリナの謀略

青杜六九
恋愛
転生モブ令嬢アレハンドリナは、王子セレドニオの婚約者ビビアナと、彼女をひそかに思う侯爵令息ルカのじれじれな恋を観察するのが日課だった。いつまで経っても決定打にかける二人に業を煮やし、セレドニオが男色家だと噂を流すべく、幼馴染の美少年イルデフォンソをけしかけたのだが……。 令嬢らしからぬ主人公が、乙女ゲームの傍観者を気取っていたところ、なぜか巻き込まれていくお話です。主人公の独白が主です。「悪役令嬢ビビアナの恋」と同じキャラクターが出てきますが、読んでいなくても全く問題はありません。あらすじはアレですが、BL要素はありません。 アレハンドリナ編のヤンデレの病み具合は弱めです。 イルデフォンソ編は腹黒です。病んでます。 2018.3.26 一旦完結しました。 2019.8.15 その後の話を執筆中ですが、別タイトルとするため、こちらは完結処理しました。

婚約破棄、承りました!悪役令嬢は面倒なので認めます。

パリパリかぷちーの
恋愛
「ミイーシヤ! 貴様との婚約を破棄する!」 王城の夜会で、バカ王子アレクセイから婚約破棄を突きつけられた公爵令嬢ミイーシヤ。 周囲は彼女が泣き崩れると思ったが――彼女は「承知いたしました(ガッツポーズ)」と即答!

乙女ゲームの悪役令嬢になったから、ヒロインと距離を置いて破滅フラグを回避しようと思ったら……なぜか攻略対象が私に夢中なんですけど!?

猪木洋平@【コミカライズ連載中】
恋愛
「イザベラ、お前との婚約を破棄する!」「はい?」悪役令嬢のイザベラは、婚約者のエドワード王子から婚約の破棄を言い渡されてしまった。男爵家令嬢のアリシアとの真実の愛に目覚めたという理由でだ。さらには義弟のフレッド、騎士見習いのカイン、氷魔法士のオスカーまでもがエドワード王子に同調し、イザベラを責める。そして正義感が暴走した彼らにより、イザベラは殺害されてしまった。「……はっ! ここは……」イザベラが次に目覚めたとき、彼女は七歳に若返っていた。そして、この世界が乙女ゲームだということに気づく。予知夢で見た十年後のバッドエンドを回避するため、七歳の彼女は動き出すのであった。

ご令嬢は一人だけ別ゲーだったようです

バイオベース
恋愛
魔法が有り、魔物がいる。 そんな世界で生きる公爵家のご令嬢エレノアには欠点が一つあった。 それは強さの証である『レベル』が上がらないという事。 そんなある日、エレノアは身に覚えの無い罪で王子との婚約を破棄される。 同じ学院に通う平民の娘が『聖女』であり、王子はそれと結ばれるというのだ。 エレノアは『聖女』を害した悪女として、貴族籍をはく奪されて開拓村へと追いやられたのだった。 しかし当の本人はどこ吹く風。 エレノアは前世の記憶を持つ転生者だった。 そして『ここがゲームの世界』だという記憶の他にも、特別な力を一つ持っている。 それは『こことは違うゲームの世界の力』。 前世で遊び倒した農業系シミュレーションゲームの不思議な力だった。

婚約破棄に、承知いたしました。と返したら爆笑されました。

パリパリかぷちーの
恋愛
公爵令嬢カルルは、ある夜会で王太子ジェラールから婚約破棄を言い渡される。しかし、カルルは泣くどころか、これまで立て替えていた経費や労働対価の「莫大な請求書」をその場で叩きつけた。

処理中です...