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本編
王都を散策
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貴族街を抜けてすぐに広がる王都の街はとても活気にあふれている。大小さまざまな商店が建ち並び、更には路肩には幾つもの露店が軒を連ねている。隣町には港もある事から、新鮮な魚介類も手に入りやすい。そんな街並みを侍女のベッキーと一緒に見てまわる。
仕事を探す……とは言ってみたものの、一体なにの仕事を探せば良いのか。せっかく異世界なのだから、それらしい事をしてみたい気もする。となると、冒険者? それならギルドに登録をして依頼をこなすという手もあるけど……一応魔法は人並みには使えるけど、それほど得意という訳でもない。というか、運動神経があまりよろしくない。
「冒険者は向いてなさそうよね……」
自分に出来そうな事って何だろう。普段は貴族令嬢としての生活しかして来なかったからなぁ。刺繍は出来るけど、あまり得意でもない。あとは、読書をしてるか、たまに邸の厨房を借りてお菓子を作らせて貰ったりしたくらいだ。
「料理……か」
そういえば、料理は前世でもやっていた。特別、料理が得意だったという訳ではないけど母親が料理上手な人だったお陰で人並みには作れていた。付き合っていた彼氏とかにも美味しいって言って貰えてたなぁ。でも、プロの料理人という訳ではない。果たしてそんな腕で仕事として成立するのだろうか。
ふと、足を止めて周りを見渡す。王都に並ぶ幾つかのレストランやカフェには入った事があるけど、味はどうだったかしら。この世界の料理は調理方法が何故か少なくて、シンプルに焼く・煮る……といった調理方法が殆どだ。なので味も質素でコクや旨味、そして何よりパンチがない。
食材は前世にあったものをベースに、この異世界独自の変わった食材も流通している。だからこそ余計に、ここがゲームの中とかじゃないのかと疑っていたのだけれどね。実際はヒロインも居なくて、わたしも悪役令嬢ではなかったみたいだから、ちょっと安心したのは事実。
試しに目についたレストランに入り、店主に料理人の募集はしていないかと聞いてみた。普段より質素なワンピースを身に着けて来たけど、店主は怪訝そうにわたしの姿を一瞥して見た。貴族だとは思われないかもだけど、裕福な家庭の子供だとは思われてそうだ。思った通り、その場で断られてしまった。
少し項垂れながら、外で待たせていたベッキーの元へと戻る。
「お嬢様、さきほどから一体何をしておいでなのですか?」
特に買い物をする訳でも無く、ただ街を歩き回り、食事をすることも無くレストランから出てきたわたしに首を傾げる。
「うーん、実は仕事を探してみようかと思って……」
わたしの言葉にベッキーが目を見開いて驚く。
「何がどうなって、そんな行動になっているのですかっ!」
ベッキーに怒られながら、事の経緯を話すわたし。するとベッキーは呆れた顔をした。
「なにも市井におりなくても、お嬢様ならきっと素敵な殿方から婚約のお話が来ますよ!」
「だって……なんだか疲れちゃったんだもの。今は誰かと結婚だなんて考えたくないわ」
「だからと言って、ご自分で仕事を探されなくても……どうしてもとおっしゃるのなら、侯爵様に相談されてはいかがですか?」
「お父様に?」
「例えば領地経営のお手伝いをなさるとか、侯爵家で展開している事業の一つをお手伝いなさるとか。色々と手は御座いますでしょうに」
「うーん……」
ベッキーに言われて、我が侯爵家の事業内容を思い出す。確かファッションブランドが一つ、それからカフェやレストランも幾つか経営していた様な気がする。確か王都にもカフェが一つあったわね。
「ちょっと見に行ってみましょう、ベッキー」
わたしは侯爵家が経営しているカフェのある場所へ向かって歩き出した。
仕事を探す……とは言ってみたものの、一体なにの仕事を探せば良いのか。せっかく異世界なのだから、それらしい事をしてみたい気もする。となると、冒険者? それならギルドに登録をして依頼をこなすという手もあるけど……一応魔法は人並みには使えるけど、それほど得意という訳でもない。というか、運動神経があまりよろしくない。
「冒険者は向いてなさそうよね……」
自分に出来そうな事って何だろう。普段は貴族令嬢としての生活しかして来なかったからなぁ。刺繍は出来るけど、あまり得意でもない。あとは、読書をしてるか、たまに邸の厨房を借りてお菓子を作らせて貰ったりしたくらいだ。
「料理……か」
そういえば、料理は前世でもやっていた。特別、料理が得意だったという訳ではないけど母親が料理上手な人だったお陰で人並みには作れていた。付き合っていた彼氏とかにも美味しいって言って貰えてたなぁ。でも、プロの料理人という訳ではない。果たしてそんな腕で仕事として成立するのだろうか。
ふと、足を止めて周りを見渡す。王都に並ぶ幾つかのレストランやカフェには入った事があるけど、味はどうだったかしら。この世界の料理は調理方法が何故か少なくて、シンプルに焼く・煮る……といった調理方法が殆どだ。なので味も質素でコクや旨味、そして何よりパンチがない。
食材は前世にあったものをベースに、この異世界独自の変わった食材も流通している。だからこそ余計に、ここがゲームの中とかじゃないのかと疑っていたのだけれどね。実際はヒロインも居なくて、わたしも悪役令嬢ではなかったみたいだから、ちょっと安心したのは事実。
試しに目についたレストランに入り、店主に料理人の募集はしていないかと聞いてみた。普段より質素なワンピースを身に着けて来たけど、店主は怪訝そうにわたしの姿を一瞥して見た。貴族だとは思われないかもだけど、裕福な家庭の子供だとは思われてそうだ。思った通り、その場で断られてしまった。
少し項垂れながら、外で待たせていたベッキーの元へと戻る。
「お嬢様、さきほどから一体何をしておいでなのですか?」
特に買い物をする訳でも無く、ただ街を歩き回り、食事をすることも無くレストランから出てきたわたしに首を傾げる。
「うーん、実は仕事を探してみようかと思って……」
わたしの言葉にベッキーが目を見開いて驚く。
「何がどうなって、そんな行動になっているのですかっ!」
ベッキーに怒られながら、事の経緯を話すわたし。するとベッキーは呆れた顔をした。
「なにも市井におりなくても、お嬢様ならきっと素敵な殿方から婚約のお話が来ますよ!」
「だって……なんだか疲れちゃったんだもの。今は誰かと結婚だなんて考えたくないわ」
「だからと言って、ご自分で仕事を探されなくても……どうしてもとおっしゃるのなら、侯爵様に相談されてはいかがですか?」
「お父様に?」
「例えば領地経営のお手伝いをなさるとか、侯爵家で展開している事業の一つをお手伝いなさるとか。色々と手は御座いますでしょうに」
「うーん……」
ベッキーに言われて、我が侯爵家の事業内容を思い出す。確かファッションブランドが一つ、それからカフェやレストランも幾つか経営していた様な気がする。確か王都にもカフェが一つあったわね。
「ちょっと見に行ってみましょう、ベッキー」
わたしは侯爵家が経営しているカフェのある場所へ向かって歩き出した。
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