悪役令嬢に転生かと思ったら違ったので定食屋開いたら第一王子が常連に名乗りを上げてきた

咲桜りおな

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本編

婚約破棄されてますけど

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「婚約破棄、ですか……」

 わたしアリエッタ・ネリネは今、目の前に居るサズレア王国第二王子のクリストファー殿下から、婚約破棄を言い渡されたところだ。今日は殿下の執務室へと呼び出しを受けていた。

 この国の宰相をしている父に連れられてよく王城へ来ては第一王子のロビウムシス殿下と、クリストファー殿下……クリス殿下の遊び相手として幼い頃から一緒に過ごしていた。いわゆる幼馴染だ。思えば、わたしがどちらかの王子と婚約を結べれば……という思惑があったに違いない。その願いは叶い、わたしとクリス殿下が七歳の時にこの婚約は結ばれた。

「理由をお聞かせいただいても宜しいでしょうか?」

 わたしの言葉に、ピクリとクリス殿下は眉を動かした。あぁ、機嫌を損ねてしまったみたいだわ。子供っぽい所のあるクリス殿下に、わたしは心の中でため息を漏らす。

「分からぬのか」
「申し訳ありません、心当たりが御座いませんので……」

 とは言うものの、内心では少しビビッていた。実はわたしは前世の記憶持ちで……記憶が甦った当時は自分が侯爵家令嬢で、しかも第二王子の婚約者になっているという現状に『ここってもしかしてゲームとか小説の中なのでは?』と、かなりな衝撃を受けていた。

 警戒しながら王立スフィーリア学園へと入学をし、ヒロインらしき生徒を捜してみたけどそれらしき人物は居なかった。不自然な逆ハーレム状態を展開させる人物も居ない。普通に平穏に学園生活は過ぎていって、あと少しで卒業パーティを迎えるという所まで来ていた。

 そんな中、こうやって婚約者の王子から婚約破棄を言い渡されている。卒業パーティでの断罪劇とかで無いのが救いだが、何故突然婚約破棄されるのかがよく分からない。

「ココレシア嬢を知っているよな?」

 クリス殿下は、あたかもわたしが知っていて当然という様に含みを持たせた言い方をした。ココレシア・ビットソン子爵令嬢……確かにそんなご令嬢が同級生には居る。

 え、もしかして、そのココレシア嬢をわたしが苛めたとか言い出すんじゃないよね? 彼女がヒロインとかじゃないよね? ココレシア嬢はいつも大人しく読書をしている様なそんなご令嬢だというのが、わたしの認識だった。そういえば最近クリス殿下とよくお話されている姿を見掛ける気がする。

 待って待って、まさかこの流れ、わたしが悪役令嬢とか言い出すんじゃないよね?
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