【近々再開予定】ピンク頭と呼ばないで―攻略対象者がお花畑で萌えない為スルーして良いですか―

咲桜りおな

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第一章

いざ、出陣! 入学式!

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 あれから色々と小うるさいお義母さまとお姉さまを上手く手玉で転がしながら、無事に王立学園への入学の準備も整わせて……いよいよゲームの舞台である学園の入学式の日がやって来た。

「お嬢、今日から宜しくお願いします」

 そう言いながら馬車に乗り込んで来たのは、あたしと同じ様に学園の制服を身にまとった銀髪に漆黒の瞳の少年だ。彼は十五歳とまだ幼いながらもカルベロス商会の一線で働く商品開発技術者の一人で、主に魔道具の開発をしている。

 カルベロス商会の運営は我が父カルベロス男爵の妹夫婦が全面的に任されており、彼はその息子。いわゆる従兄弟ってやつだ。カルベロス男爵はお飾りの会長職で、実質は妹夫婦が手腕を発揮しているお陰で我が男爵家は裕福なのだ。男爵本人は仕事と言いつつ、遊び歩いているだけの人だったりする。お義母さま、お姉さまだけでなくホント使えないよね、揃いも揃って。

「こちらこそ宜しくね、ブルーニクス」

 一応あたしは本家の娘なので、商会の皆からは「お嬢様」とか「お嬢」とか呼ばれていたりする。同い年であるブルーニクスも、あたしの事をそう呼んでいる。こうして同じ馬車に乗っているのは、同じ学園に通学するからという事もあるのだけど……実はあたしの護衛も兼ねている。パッと見、細身だし強そうに見えないんだけどね……商団を率いて旅をする事もあるからか、商会の人間は皆強者揃いらしい。

「ごめんね、あたしの世話まで押し付けちゃって……その内、ちゃんとした人雇うから待ってて」

 フローラお姉さまにはちゃんとした護衛騎士を一人付けているのだが、あたしには誰も付けて貰えていなかったんだよね。入学を機に付けて欲しいって言ったら、それなら商会の誰かを選べと言われた。変な所でケチ臭いのは何でだ。

「ん……別に俺はこのままでも構わないよ。どうせ同じ場所に行くんだし」
「そう? じゃあ学生の間だけお願いしようかな」
「了解。んじゃ、ちょっと寝るから着いたら起こして」

 そう言うなり、ブルーニクスは目を閉じて眠り始めた。昔からそうだけど、結構マイペースなのよね……。まぁ、いいけど。

 ◆◇◇◇ ◇◇◇◇ ◇◇◇◆

 暫く馬車が走って、王都の中心部にある王立学園の正門をくぐり抜けた。そこから馬車停めのある場所まで走り、ようやく止まる。あたしはブルーニクスを起こして、馬車から降りると意気揚々と学園の地面へと足を下ろした。

 ブルーニクスは眠そうに欠伸を噛み殺し、ぼーっとした様子であたしの後ろに立っている。あたしは目の前に広がる景色に飛び跳ねたいくらいにテンションが上がっていた。ゲーム画面で見ていたあの学園に、今こうして居るんだわ。凄い、凄い、凄い!

 脳内でオープニングムービーを再生する。そう、このピンクの花びらが舞う校庭はまさしくあのゲーム画面そのものだ。入学式の今日は、確かメイン攻略対象者である第一王子との出逢いイベントがある。式典が行われる講堂へ行く道が分からなくて迷子になっているヒロインが、たまたま通りがかった第一王子と出逢うのだ。

「お嬢、皆もう向かい始めてるから行こうぜ」

 ブルーニクスに声を掛けられて、はたと我に返る。そうだ、第一王子は婚約者が居るから出逢いイベントを起こさなくても良いんだったわ。

「うん、そうね。行きましょ……う!? わっ、わっ? えっ?」

 皆が向かい始めた講堂の方へと足を向けようとすると、何故か色んな生徒たちにぶつかりまくって前へと進めない。ぶつかりまくってる内に人混みからはじき出されて、どんどんと講堂からは遠ざかっていってしまう。

「な、なに? えっ?」
「お嬢!?」

 そして生徒たちが居なくなったと思ったら、今度は教師たち、それから掃除のおじちゃんとか、何かの配達の人とかにぶつかられて……気が付いたら、ブルーニクスとあたしはその場に取り残されていた。

「何やってるんだよ、お嬢」
「いや……それがあたしにもサッパリ……」

 謎の現象に少しグッタリしていると、視界の端にキラキラと輝く金髪が見えた。

「……え」

 見覚えのあるその金髪をなびかせて、一人の生徒があたしの傍を右へ行ったり左へ行ったり……している。えーと……何してるんだろ、この人。てゆーか、もしかしなくても、第一王子様じゃないですかね?

 さわらぬ神に祟りなし! と、その場を離れようとするとキラキラ金髪王子がその行く手を塞ぐ様に立ちはだかる。それを避けてすり抜けようとしても、キラキラ金髪王子もそちらへと移動してくる。

「あああああああああ、なんなの、うっとおしいんですけどぉ!」

 思わず心の声そのまま発してしまったあたしに、“今、気付きました!”とばかりに金髪王子は急に目を合わせて来た。

「やぁ、もしかして迷子かい?」
「お前が迷子だろぉおおおおおおおおおお」
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