2 / 24
第一章
まずはお姉さまのしつけから!
しおりを挟む
コンコンコン! と激しく扉がノックされた。それと同時に返事も待たずに一人の少女が部屋へと入って来る。
「ちょっとパフィット、いつまで寝てるのよ! 転んだくらい、なによ。本当にとろいわね」
いつもの様に赤いポニーテールの髪を揺らしながら腹違いの姉であるフローラお姉さまが、ずかずかと姿見の前に居るあたしの傍へと歩いてくる。それを眉一つ動かさないで凝視する。
「な、なによ、その目は」
普段のあたしならフローラお姉さまの姿を見ただけで萎縮してしまう所なのに、微動だにせず自分を見つめて来るあたしの様子に少したじろいでいる。
「……はしたないですわね、フローラお姉さま」
「はぁ?」
「いくら姉妹とはいえ、返事も待たずに部屋へ入って来られるだなんて。それでも淑女教育をお受けになられた令嬢ですか?」
自分が何を言われているのか理解できないといった表情で、ポカンと口を開けるお姉さま。
「それに……そのお口を大きく開いたままのお間抜けなお顔! とても見れたものじゃありませんわよ」
「なっ……なっ……」
怒りで顔を赤く染め上げたフローラお姉さまが、思わず手を振り上げてあたしを叩いた……と、思わせておいてその手をヒョイッとかわしてやる。空を切った自分の腕につられて、お姉さまの身体がつんのめる。いつもなら簡単にあたしを叩いていたので、まさか避けられるだなんて思いもしなかったのだろう。
「パフィット!」
避けられた事で余計に恥ずかしくなったのか、声を荒げる。
「お・ね・え・さ・ま」
「ひっ!?」
スッと不意を突いてお姉さまの耳元へ唇を寄せるあたし。
「人にアレコレ言う前に、ご自分の振る舞いを見直されては如何かしら? そんなんじゃ、いつまで経っても嫁の貰い手がありませんわよ」
「……ぱふぃ……と」
いきなり態度が豹変した妹の姿に恐怖したのか、今度はどんどん顔が青ざめていく。そして唇を噛みしめて、悔しそうに顔を歪めながらあたしの部屋から逃げて行った。
「やれやれ……多分お義母さまを呼びに行ったわね」
あたしは姿見の前から移動して、部屋に置かれたソファーへと腰掛けた。苛められてはいても、裕福な男爵家の令嬢だ。部屋の家具など調度品はとても質の良さそうな物を置いてある。
「お茶でも淹れようかしら……そういえば、あたしには侍女もメイドも付いてなかったわね」
よくあるラノベとかでは専属の侍女とが居て、お茶の用意なんかはしてもらってるイメージだったけど……あたしは家事をやらされていたものね。邸にメイドは居るけど世話をして貰った事ないわね。まぁ、元々ここに来る前は自分で全部やっていたし。前世でなんて、それこそ一般市民だったから別に自分でする事なんて苦でも何でもないけど。
「うん、喉が渇いたし。取り敢えず厨房へ行こう。この部屋には水差しすら無いもの」
改めて自分の置かれている待遇になんてこった、と肩をすくめた。
「ちょっとパフィット、いつまで寝てるのよ! 転んだくらい、なによ。本当にとろいわね」
いつもの様に赤いポニーテールの髪を揺らしながら腹違いの姉であるフローラお姉さまが、ずかずかと姿見の前に居るあたしの傍へと歩いてくる。それを眉一つ動かさないで凝視する。
「な、なによ、その目は」
普段のあたしならフローラお姉さまの姿を見ただけで萎縮してしまう所なのに、微動だにせず自分を見つめて来るあたしの様子に少したじろいでいる。
「……はしたないですわね、フローラお姉さま」
「はぁ?」
「いくら姉妹とはいえ、返事も待たずに部屋へ入って来られるだなんて。それでも淑女教育をお受けになられた令嬢ですか?」
自分が何を言われているのか理解できないといった表情で、ポカンと口を開けるお姉さま。
「それに……そのお口を大きく開いたままのお間抜けなお顔! とても見れたものじゃありませんわよ」
「なっ……なっ……」
怒りで顔を赤く染め上げたフローラお姉さまが、思わず手を振り上げてあたしを叩いた……と、思わせておいてその手をヒョイッとかわしてやる。空を切った自分の腕につられて、お姉さまの身体がつんのめる。いつもなら簡単にあたしを叩いていたので、まさか避けられるだなんて思いもしなかったのだろう。
「パフィット!」
避けられた事で余計に恥ずかしくなったのか、声を荒げる。
「お・ね・え・さ・ま」
「ひっ!?」
スッと不意を突いてお姉さまの耳元へ唇を寄せるあたし。
「人にアレコレ言う前に、ご自分の振る舞いを見直されては如何かしら? そんなんじゃ、いつまで経っても嫁の貰い手がありませんわよ」
「……ぱふぃ……と」
いきなり態度が豹変した妹の姿に恐怖したのか、今度はどんどん顔が青ざめていく。そして唇を噛みしめて、悔しそうに顔を歪めながらあたしの部屋から逃げて行った。
「やれやれ……多分お義母さまを呼びに行ったわね」
あたしは姿見の前から移動して、部屋に置かれたソファーへと腰掛けた。苛められてはいても、裕福な男爵家の令嬢だ。部屋の家具など調度品はとても質の良さそうな物を置いてある。
「お茶でも淹れようかしら……そういえば、あたしには侍女もメイドも付いてなかったわね」
よくあるラノベとかでは専属の侍女とが居て、お茶の用意なんかはしてもらってるイメージだったけど……あたしは家事をやらされていたものね。邸にメイドは居るけど世話をして貰った事ないわね。まぁ、元々ここに来る前は自分で全部やっていたし。前世でなんて、それこそ一般市民だったから別に自分でする事なんて苦でも何でもないけど。
「うん、喉が渇いたし。取り敢えず厨房へ行こう。この部屋には水差しすら無いもの」
改めて自分の置かれている待遇になんてこった、と肩をすくめた。
11
お気に入りに追加
560
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
今日結婚した夫から2年経ったら出ていけと言われました
四折 柊
恋愛
子爵令嬢であるコーデリアは高位貴族である公爵家から是非にと望まれ結婚した。美しくもなく身分の低い自分が何故? 理由は分からないが自分にひどい扱いをする実家を出て幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱く。ところがそこには思惑があり……。公爵は本当に愛する女性を妻にするためにコーデリアを利用したのだ。夫となった男は言った。「お前と本当の夫婦になるつもりはない。2年後には公爵邸から国外へ出ていってもらう。そして二度と戻ってくるな」と。(いいんですか? それは私にとって……ご褒美です!)
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
ある王国の王室の物語
朝山みどり
恋愛
平和が続くある王国の一室で婚約者破棄を宣言された少女がいた。カップを持ったまま下を向いて無言の彼女を国王夫妻、侯爵夫妻、王太子、異母妹がじっと見つめた。
顔をあげた彼女はカップを皿に置くと、レモンパイに手を伸ばすと皿に取った。
それから
「承知しました」とだけ言った。
ゆっくりレモンパイを食べるとお茶のおかわりを注ぐように侍女に合図をした。
それからバウンドケーキに手を伸ばした。
カクヨムで公開したものに手を入れたものです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
筆頭婚約者候補は「一抜け」を叫んでさっさと逃げ出した
基本二度寝
恋愛
王太子には婚約者候補が二十名ほどいた。
その中でも筆頭にいたのは、顔よし頭良し、すべての条件を持っていた公爵家の令嬢。
王太子を立てることも忘れない彼女に、ひとつだけ不満があった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
私はヒロインを辞められなかった……。
くーねるでぶる(戒め)
恋愛
私、砂川明は乙女ゲームのヒロインに転生した。どうせなら、逆ハーレムルートを攻略してやろうとするものの、この世界の常識を知れば知る程……これ、無理じゃない?
でもでも、そうも言ってられない事情もあって…。ああ、私はいったいどうすればいいの?!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜
白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。
舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。
王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。
「ヒナコのノートを汚したな!」
「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」
小説家になろう様でも投稿しています。
悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。
三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。
何度も断罪を回避しようとしたのに!
では、こんな国など出ていきます!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
変な転入生が現れましたので色々ご指摘さしあげたら、悪役令嬢呼ばわりされましたわ
奏音 美都
恋愛
上流階級の貴族子息や令嬢が通うロイヤル学院に、庶民階級からの特待生が転入してきましたの。
スチュワートやロナルド、アリアにジョセフィーンといった名前が並ぶ中……ハルコだなんて、おかしな
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる