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第一章
ピンク頭、覚醒!
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「……う、うう、ん」
あたしはズキズキとする頭を押さえながら、ベッドで目を覚ます。その視界に入るのは広い天井だった。何ココ……あたしの住んでるアパートの部屋じゃないよね。ぼんやりとそんな事を考えながら、起き上がるとまるでホテルのスイートルームみたいな部屋に居た。周りを見渡すとそこにはいかにも高級そうな家具が並んでいるのが見える。
「んーっ?」
意識が次第にハッキリしだしてきて、ふとこの部屋が自分の部屋だという事も認識してきた。そうだ、ここはあたしが数年前から暮らしてきた部屋だ。じゃあさっきのアパートとか言うのは一体……。考えを巡らせてみると、アレは今のあたしじゃない前世での記憶だ。
「そうだわ……」
今のあたしの名前はパフィット・カルベロス。ここ、モフテテ王国のカルベロス男爵家の令嬢だ。
カルベロス男爵家は王国内外問わず手広く商売をしているカルベロス商会を有しており、男爵家と爵位は低いがかなり裕福だ。あたしは元々庶子で、数年前までは母親と二人で貧しい生活を送っていた。母を病気で亡くしてすぐ、あたしはこの男爵家の次女として引き取られた。
突然現れた妾の子に当然、正妻である男爵夫人とその娘はあたしを毛嫌いした。父親であるカルベロス男爵は幼いあたしの世話を夫人へと押し付けたもんだから、そりゃあもう、毎日毎日あたしは酷い苛めにあっている。男爵家令嬢としての扱いはせず、まるで使用人かの様に家の仕事をやらせてはミスを見つけてののしるのだ。
――あぁ、ホント、うっざ。
前世の記憶が無かった今までは、大人しく継母と腹違いの姉の言う事に従ってたけど……マジで何で大人しく聞いてたんだろう。今日も掃除の最中にわざと足を引っかけられて、そのせいで盛大にすっ転んで頭を打ったのだ。まぁ、お陰でこうして前世の記憶を思い出したのだけど。
「……おー! “悠久の刻をともに”のヒロインじゃん」
ベッドから抜け出し、姿見に自分の姿を映してみる。そこには、ふわふわのピンクゴールドの長い髪に大きなパステルブルーの瞳を輝かせた美少女が映っていた。
「名前からして、まさかとは思ったけど……流行のゲーム転生ってやつ?」
角度を色々変えて鏡の中の美少女の姿を堪能する。よく覚えては無いけど、あたしは前世で死んでこの世界に生まれ変わったという事よね。前世で散々遊んでいた乙女ゲームの世界に転生するだなんて、本当にあるんだなぁ。
「て事は、攻略対象者たちも居るって事だよね。確かもうすぐ入学式だ! 楽しみ~」
ゲーム画面で見ていたあのキラキラした素敵な攻略対象者たちと、もうすぐ出会えると思うと楽しみで仕方がない。あ……でも、ちょっと待ってよ。あたしがヒロインだという事は、悪役令嬢も居るって事だよね?
「うーん、最近は悪役令嬢からヒロインが“ざまぁ”されるのがテンプレになってるからなぁ……それは嫌だなぁ。別に逆ハーしたい訳でもないし、出来たら悪役令嬢とも仲良くなれないかしらね」
鏡の前で腕を組みつつ、物思いにふける。王子を攻略しなければ悪役令嬢も手出しして来ないのかな? それに婚約破棄とかされてもねぇ……婚約者居る時点で攻略したらダメでしょ普通。そんな浮気男なんてそもそも要らないし~。
「よしっ! 攻略するのなら婚約者の居ない人にしよう。んで、なるべく平和に過ごそう!」
これからの方針は取り敢えず決まった。あとは……今の立場を何とかしなくちゃね。
「まずは、お義母さまとお姉さまへの反撃開始と行きますかね~」
あたしはニヤリと微笑んだ。悪そうに微笑んだのに、鏡の中の美少女はとても可憐だ。うん、美少女って、ヒロインって凄いなマジで。
あたしはズキズキとする頭を押さえながら、ベッドで目を覚ます。その視界に入るのは広い天井だった。何ココ……あたしの住んでるアパートの部屋じゃないよね。ぼんやりとそんな事を考えながら、起き上がるとまるでホテルのスイートルームみたいな部屋に居た。周りを見渡すとそこにはいかにも高級そうな家具が並んでいるのが見える。
「んーっ?」
意識が次第にハッキリしだしてきて、ふとこの部屋が自分の部屋だという事も認識してきた。そうだ、ここはあたしが数年前から暮らしてきた部屋だ。じゃあさっきのアパートとか言うのは一体……。考えを巡らせてみると、アレは今のあたしじゃない前世での記憶だ。
「そうだわ……」
今のあたしの名前はパフィット・カルベロス。ここ、モフテテ王国のカルベロス男爵家の令嬢だ。
カルベロス男爵家は王国内外問わず手広く商売をしているカルベロス商会を有しており、男爵家と爵位は低いがかなり裕福だ。あたしは元々庶子で、数年前までは母親と二人で貧しい生活を送っていた。母を病気で亡くしてすぐ、あたしはこの男爵家の次女として引き取られた。
突然現れた妾の子に当然、正妻である男爵夫人とその娘はあたしを毛嫌いした。父親であるカルベロス男爵は幼いあたしの世話を夫人へと押し付けたもんだから、そりゃあもう、毎日毎日あたしは酷い苛めにあっている。男爵家令嬢としての扱いはせず、まるで使用人かの様に家の仕事をやらせてはミスを見つけてののしるのだ。
――あぁ、ホント、うっざ。
前世の記憶が無かった今までは、大人しく継母と腹違いの姉の言う事に従ってたけど……マジで何で大人しく聞いてたんだろう。今日も掃除の最中にわざと足を引っかけられて、そのせいで盛大にすっ転んで頭を打ったのだ。まぁ、お陰でこうして前世の記憶を思い出したのだけど。
「……おー! “悠久の刻をともに”のヒロインじゃん」
ベッドから抜け出し、姿見に自分の姿を映してみる。そこには、ふわふわのピンクゴールドの長い髪に大きなパステルブルーの瞳を輝かせた美少女が映っていた。
「名前からして、まさかとは思ったけど……流行のゲーム転生ってやつ?」
角度を色々変えて鏡の中の美少女の姿を堪能する。よく覚えては無いけど、あたしは前世で死んでこの世界に生まれ変わったという事よね。前世で散々遊んでいた乙女ゲームの世界に転生するだなんて、本当にあるんだなぁ。
「て事は、攻略対象者たちも居るって事だよね。確かもうすぐ入学式だ! 楽しみ~」
ゲーム画面で見ていたあのキラキラした素敵な攻略対象者たちと、もうすぐ出会えると思うと楽しみで仕方がない。あ……でも、ちょっと待ってよ。あたしがヒロインだという事は、悪役令嬢も居るって事だよね?
「うーん、最近は悪役令嬢からヒロインが“ざまぁ”されるのがテンプレになってるからなぁ……それは嫌だなぁ。別に逆ハーしたい訳でもないし、出来たら悪役令嬢とも仲良くなれないかしらね」
鏡の前で腕を組みつつ、物思いにふける。王子を攻略しなければ悪役令嬢も手出しして来ないのかな? それに婚約破棄とかされてもねぇ……婚約者居る時点で攻略したらダメでしょ普通。そんな浮気男なんてそもそも要らないし~。
「よしっ! 攻略するのなら婚約者の居ない人にしよう。んで、なるべく平和に過ごそう!」
これからの方針は取り敢えず決まった。あとは……今の立場を何とかしなくちゃね。
「まずは、お義母さまとお姉さまへの反撃開始と行きますかね~」
あたしはニヤリと微笑んだ。悪そうに微笑んだのに、鏡の中の美少女はとても可憐だ。うん、美少女って、ヒロインって凄いなマジで。
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