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第二章
第二十五話 とうとう入学
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あっと言う間に季節は流れ、十五歳になったわたしは王立学園に入学する事になった。真新しい制服に身を包んで学園の門をくぐる。耳にはコバルトガーナイトのピアスが光っている。
新入生たちでごった返す校舎へと続く道の途中、ピンクの髪のあの令嬢が何やらキョロキョロしている。それを見つけたわたしは『あぁ……殿下を探しているのか』と一人納得して、ヒロインを放置して通り過ぎた。残念ながら殿下は“ヒロインとの出逢いイベント”を回避するべく、入学式が行われる講堂に入ってる筈だ。
「て事は逆ハー狙いか……」
ヒロインがわたしと同じくタクト様推しとかなら真向勝負して、最終的にはタクト様がどちらを選ばれるかによってわたしの立ち位置は変わると考えていた。でもそれも、魅了の力やマジックアイテムを使わずにヒロインが居てくれたらの話だ。
既にヒロインは、わたしにマジックアイテムを仕掛けて来た。これは普通に恋愛する気などないって事だ。手段を選ばず、攻略対象者たちを自分の思う通りにはべらしたい……そんな感じなんだろう。因みにあの髪留めは現在、殿下の元で保管されている。
「ヒロインが“ざまぁ”される物語とか読んだ事ないのかしらね」
別にわたしは悪役令嬢でも何でもない。ただのモブ令嬢だ。だからヒロインに“ざまぁ”とかしたい訳ではないけど……タクト様や殿下、それにティアナ様にもし危害を加える事があるなら申し訳ないけど表舞台からは消えて貰わないといけないわね。
というか……あの殿下に近付いた時点でアウトだろうけど。
ヒロインは知らない。わたしと殿下が同じ転生者だという事を。更に、あの殿下は絶対に敵に回してはいけないお方だという事を。ティアナ様を守る為なら徹底的に排除する冷酷さを持っておられるお方だからね。きっとこれは王族に生まれたからなんだろうけど。そうでないと次期国王なんて務まらない。
そんな事も露知らず、殿下を探してキョロキョロしているヒロインを、振り返って憐みの目で見た。――――ご愁傷様。
◆◇◇◇ ◇◇◇◇ ◇◇◇◆
どうやらわたしはティアナ様と同じクラスになった様だ。そして当然の如く、ヒロインもクラスメイトだった。まぁ、ヒロインの動向を監視できるから丁度良いのだけど、やたらと馴れ馴れしく彼女は話し掛けてくるから困る。
そしてヒロインはようやく本領発揮という事なのか攻略対象者の方々とのイベントを続々と起こして、あっという間にまずは大商人の次男である侯爵家令息のギュンター様を墜とした様だ。「あはは」「うふふ」とイチャついてる姿をよく見かける。ギュンター様は一番攻略するのが簡単なお方だからね……。
マーベリー先生は墜ちる一歩手前という感じみたい。足蹴く彼の個人授業に通っている。手取り足取りと色々教えて貰っちゃうのよね……彼には。何気に接触イベントが多かったから、思い出しただけでも顔が熱くなってきちゃうわ。
魔導士見習いの侯爵家令息パワード様は、殿下の次に攻略が難しい事で有名だった。なかなか好感度が上がらないのよねー彼。こちらは少々時間が掛かるでしょうね。
今でも殿下とは内密に作戦会議を重ねているのだけど、やっぱり魅了の力を使った形跡があるらしい。そして、最近気になるのは……ヒロインがやたらとティアナ様をガン見している事だろうか。
「ティアナ様、よろしければここの問題の解き方を教えて頂けますか?」
そう言ってわたしは、わざと声を掛けてヒロインの視線からティアナ様のお姿を遮る。あぁ、背後から“邪魔よ、どいて!”と突き刺さる様な視線を感じるわ~。
「ええ、いいわよ。どこかしら?」
若干ぽやや~んとした雰囲気を醸し出すティアナ様がこれまた可愛らしい。ゲームでのティアナ様といえば、傲慢で高圧的な典型的な悪役令嬢って感じだったのだけど今のティアナ様は全然違う。殿下曰く、徹底的に甘やかしまくって溺愛してたらこうなった……とおっしゃっていた。うん、やはり殿下には逆らってはいけない気がする。
そんなある意味刺激的? な学園生活を送っていたら、久々に殿下からの招集がかかった。
新入生たちでごった返す校舎へと続く道の途中、ピンクの髪のあの令嬢が何やらキョロキョロしている。それを見つけたわたしは『あぁ……殿下を探しているのか』と一人納得して、ヒロインを放置して通り過ぎた。残念ながら殿下は“ヒロインとの出逢いイベント”を回避するべく、入学式が行われる講堂に入ってる筈だ。
「て事は逆ハー狙いか……」
ヒロインがわたしと同じくタクト様推しとかなら真向勝負して、最終的にはタクト様がどちらを選ばれるかによってわたしの立ち位置は変わると考えていた。でもそれも、魅了の力やマジックアイテムを使わずにヒロインが居てくれたらの話だ。
既にヒロインは、わたしにマジックアイテムを仕掛けて来た。これは普通に恋愛する気などないって事だ。手段を選ばず、攻略対象者たちを自分の思う通りにはべらしたい……そんな感じなんだろう。因みにあの髪留めは現在、殿下の元で保管されている。
「ヒロインが“ざまぁ”される物語とか読んだ事ないのかしらね」
別にわたしは悪役令嬢でも何でもない。ただのモブ令嬢だ。だからヒロインに“ざまぁ”とかしたい訳ではないけど……タクト様や殿下、それにティアナ様にもし危害を加える事があるなら申し訳ないけど表舞台からは消えて貰わないといけないわね。
というか……あの殿下に近付いた時点でアウトだろうけど。
ヒロインは知らない。わたしと殿下が同じ転生者だという事を。更に、あの殿下は絶対に敵に回してはいけないお方だという事を。ティアナ様を守る為なら徹底的に排除する冷酷さを持っておられるお方だからね。きっとこれは王族に生まれたからなんだろうけど。そうでないと次期国王なんて務まらない。
そんな事も露知らず、殿下を探してキョロキョロしているヒロインを、振り返って憐みの目で見た。――――ご愁傷様。
◆◇◇◇ ◇◇◇◇ ◇◇◇◆
どうやらわたしはティアナ様と同じクラスになった様だ。そして当然の如く、ヒロインもクラスメイトだった。まぁ、ヒロインの動向を監視できるから丁度良いのだけど、やたらと馴れ馴れしく彼女は話し掛けてくるから困る。
そしてヒロインはようやく本領発揮という事なのか攻略対象者の方々とのイベントを続々と起こして、あっという間にまずは大商人の次男である侯爵家令息のギュンター様を墜とした様だ。「あはは」「うふふ」とイチャついてる姿をよく見かける。ギュンター様は一番攻略するのが簡単なお方だからね……。
マーベリー先生は墜ちる一歩手前という感じみたい。足蹴く彼の個人授業に通っている。手取り足取りと色々教えて貰っちゃうのよね……彼には。何気に接触イベントが多かったから、思い出しただけでも顔が熱くなってきちゃうわ。
魔導士見習いの侯爵家令息パワード様は、殿下の次に攻略が難しい事で有名だった。なかなか好感度が上がらないのよねー彼。こちらは少々時間が掛かるでしょうね。
今でも殿下とは内密に作戦会議を重ねているのだけど、やっぱり魅了の力を使った形跡があるらしい。そして、最近気になるのは……ヒロインがやたらとティアナ様をガン見している事だろうか。
「ティアナ様、よろしければここの問題の解き方を教えて頂けますか?」
そう言ってわたしは、わざと声を掛けてヒロインの視線からティアナ様のお姿を遮る。あぁ、背後から“邪魔よ、どいて!”と突き刺さる様な視線を感じるわ~。
「ええ、いいわよ。どこかしら?」
若干ぽやや~んとした雰囲気を醸し出すティアナ様がこれまた可愛らしい。ゲームでのティアナ様といえば、傲慢で高圧的な典型的な悪役令嬢って感じだったのだけど今のティアナ様は全然違う。殿下曰く、徹底的に甘やかしまくって溺愛してたらこうなった……とおっしゃっていた。うん、やはり殿下には逆らってはいけない気がする。
そんなある意味刺激的? な学園生活を送っていたら、久々に殿下からの招集がかかった。
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