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第一章
第五話 お声
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「あの……助けて頂いてありがとう御座いました」
「気にすんなって。んで、お前この後どうすんの。帰るのか?」
「実は新しく出来たパン屋に行こうと思ってまして」
「おっ、いいね。おれも付いてって良い?」
「はい」
他愛ない会話をしながらパン屋へ向かって歩き出す。こんな風にタクト様と並んで歩く事が出来るなんて思ってもみなかったなー。転生して良かったー! あのお茶会から一年半経ってるから、恐らくタクト様は今十二歳くらいの筈。少年タクト様、このお声の声優は誰なのかしら。ゲームではもう十六歳になられてたから、あの人気男性声優が声をあてていて……なんて考えながらタクト様の顔をチラチラと見ていたんだけど。
「何? おれの顔に何かついてる?」
「ほひゃっ!? な、何でもありません。た、ただ素敵なお声だなーって……」
「え……」
かぁあああああ……とまるで効果音が付くかの様に、タクト様のお顔が赤く染まっていく。し、しまった! つい、本音がそのまま口から出てしまった。
「……お前さ」
「は、はいっ」
やばい、怒られるだろうか。ここは先に謝っておくべきか!? お友達認定されて調子に乗ってしまったかもしれない。
「やっぱ変わってるな。容姿を褒めてくる奴は幾らでもいるけど、声の事言われたのは初めてだ」
「え、勿体ない。こんな素敵ボイスに皆さん気付かれないなんて……」
思わず呟いたわたしの言葉にタクト様が少し目を見開いて、何故かご自分の口元を右手で押さえた。そして視線を少し斜め下に外される。ん、どうしたんだろう? もしかしてまた失言してしまった?
「あ……変な事言っちゃって、ごめんなさい」
声フェチ発言してごめんなさい! だって前世では声優オタクだったので! もうこれは、わたしの生まれ持った性なのです。あ、いや元々のわたしは違ってたのかもしれないけど、前世のわたしがそうさせてるんですー。ごめーん、元々のわたしとタクト様!
「いや、構わないが……それより…………」
赤い顔のまま、わたしの方をじぃ……と見つめられ、何か言いにくそうにしながらも口を開かれる。あぁ、そんな風に見つめられちゃうと溶けてしまうってば。無理、無理、推しからのガン見なんて至福すぎて液体と化してしまいそうよ。
「お前はおれの……この声、好きなのか?」
「あ、はい。大好きですよ」
「っ!」
勿論好きに決まってるじゃないですかー。推しのお声ですよ。少年時代だろうが大人になられようが、お爺さんになったって、全部丸ごと大好きに決まってますもの。何を言ってるのかと、胸を張って答えるわたし。
「…………か、顔は、どうだ。顔も好みか?」
「勿論です! タクト様の全てがもう、大好きです!」
あぁ、推しに堂々と大好き宣言出来るなんて何て幸せなのかしら~!
「そ、そうか」
もはや赤を通り越しちゃうんじゃないかと言うくらいに真っ赤な顔のまま、何やら嬉しそうに頷いておられるタクト様。よく分からないけど、喜んで頂けてるのならわたしも嬉しい。
その後、始終ご機嫌のタクト様と一緒にパン屋で買い物をして何故かカフェでお茶もご馳走になった上にいつの間に購入されたのか、お土産のケーキを持たされて……わたしは邸へと帰る事になった。こんなに至れり尽くせりされて大丈夫なのだろうか。お友達認定って何だか凄いな。
「気にすんなって。んで、お前この後どうすんの。帰るのか?」
「実は新しく出来たパン屋に行こうと思ってまして」
「おっ、いいね。おれも付いてって良い?」
「はい」
他愛ない会話をしながらパン屋へ向かって歩き出す。こんな風にタクト様と並んで歩く事が出来るなんて思ってもみなかったなー。転生して良かったー! あのお茶会から一年半経ってるから、恐らくタクト様は今十二歳くらいの筈。少年タクト様、このお声の声優は誰なのかしら。ゲームではもう十六歳になられてたから、あの人気男性声優が声をあてていて……なんて考えながらタクト様の顔をチラチラと見ていたんだけど。
「何? おれの顔に何かついてる?」
「ほひゃっ!? な、何でもありません。た、ただ素敵なお声だなーって……」
「え……」
かぁあああああ……とまるで効果音が付くかの様に、タクト様のお顔が赤く染まっていく。し、しまった! つい、本音がそのまま口から出てしまった。
「……お前さ」
「は、はいっ」
やばい、怒られるだろうか。ここは先に謝っておくべきか!? お友達認定されて調子に乗ってしまったかもしれない。
「やっぱ変わってるな。容姿を褒めてくる奴は幾らでもいるけど、声の事言われたのは初めてだ」
「え、勿体ない。こんな素敵ボイスに皆さん気付かれないなんて……」
思わず呟いたわたしの言葉にタクト様が少し目を見開いて、何故かご自分の口元を右手で押さえた。そして視線を少し斜め下に外される。ん、どうしたんだろう? もしかしてまた失言してしまった?
「あ……変な事言っちゃって、ごめんなさい」
声フェチ発言してごめんなさい! だって前世では声優オタクだったので! もうこれは、わたしの生まれ持った性なのです。あ、いや元々のわたしは違ってたのかもしれないけど、前世のわたしがそうさせてるんですー。ごめーん、元々のわたしとタクト様!
「いや、構わないが……それより…………」
赤い顔のまま、わたしの方をじぃ……と見つめられ、何か言いにくそうにしながらも口を開かれる。あぁ、そんな風に見つめられちゃうと溶けてしまうってば。無理、無理、推しからのガン見なんて至福すぎて液体と化してしまいそうよ。
「お前はおれの……この声、好きなのか?」
「あ、はい。大好きですよ」
「っ!」
勿論好きに決まってるじゃないですかー。推しのお声ですよ。少年時代だろうが大人になられようが、お爺さんになったって、全部丸ごと大好きに決まってますもの。何を言ってるのかと、胸を張って答えるわたし。
「…………か、顔は、どうだ。顔も好みか?」
「勿論です! タクト様の全てがもう、大好きです!」
あぁ、推しに堂々と大好き宣言出来るなんて何て幸せなのかしら~!
「そ、そうか」
もはや赤を通り越しちゃうんじゃないかと言うくらいに真っ赤な顔のまま、何やら嬉しそうに頷いておられるタクト様。よく分からないけど、喜んで頂けてるのならわたしも嬉しい。
その後、始終ご機嫌のタクト様と一緒にパン屋で買い物をして何故かカフェでお茶もご馳走になった上にいつの間に購入されたのか、お土産のケーキを持たされて……わたしは邸へと帰る事になった。こんなに至れり尽くせりされて大丈夫なのだろうか。お友達認定って何だか凄いな。
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