完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな

文字の大きさ
上 下
54 / 69
第二章

アーサー殿下との面会

しおりを挟む
「ようこそ、おいで下さいました。さぁ、こちらへどうぞティアナ嬢」

 王宮の中にある応接室の一つへと案内されると、既にアーサー殿下が待っていてくれた。軽く挨拶を交わして促されるままソファーへと腰を下ろす。メイドの手によってテーブルには熱々のダージリンティーが用意された。

「お時間頂き、有難う御座います殿下」
「いえ、ティアナ嬢の頼みなら幾らでも時間を作りますよ」
「有難う御座います」

 アーサー殿下とは幼い頃からの顔馴染みだ。未来の義弟という事もあって普通に友人として仲良くさせて貰っている。アルスト殿下達の捜索にも尽力されているのであろう、どことなく顔に疲れが滲んでいる気がする。そういうあたしも毎日不安で眠れない夜を過ごしているので、きっと目の下に隈が出来ている事に気付かれているかもしれない。マイリ―に上手く化粧で隠しては貰ってるだけれど。

「それで、お願いがあるとか?」
「はい」

 紅茶を頂いて一息ついた所で、早速本題へと話は及んだ。

「アルスト殿下と兄達の件は存じております」
「そうですか……」
「そして何処に居るのかも、友人のお陰で見当がついております」
「えっ……」

 アーサー殿下が驚いた表情を見せた。王家や我がローゼン家の暗部までもが総動員で行方を追っているのに未だに消息が掴めていないのだ。それなのに、たかが公爵家の令嬢が行方を知っているというのだから驚かない訳がないだろう。

「ただ居場所は分かりますが、そこは特殊な扉に鍵が掛かっていて……ある人物の協力が必要なのです。今日はその許可を頂きたく参りました」
「許可、ですか。それは王家の許可が必要な人物という事なのですね?」
「はい」

 暫し沈黙が流れる。王家の許可が必要な人物となると、そう容易く即答する訳にもいかないだろう。

「……どなたか、お聞きしても?」
「ミンスロッティ・パチェット。元パチェット男爵家の令嬢だった者です」

 あの事件があってからパチェット男爵家は取り潰しとなっていて今は存在しない。元パチェット男爵とその家族達は貴族籍を剝奪され、平民となり王家監視の元で炭鉱で働かされていると聞いている。ミンスロッティは聖女の力があった為、修道院送りとなり国の為に毎日祈りを捧げて聖女の仕事を全うしていた。

「これはまた……意外な人物の名前が出ましたね」

 アーサー殿下はゆっくりと紅茶を口へ運びながら考えを巡らせている様だ。あたしはただ黙ってその返答を待つ。

「聖女の力が必要な扉……という事なのですね」
「はい」

 あたしだって出来る事ならあの人の力なんて借りたくはない。けど、大切な人達の為だ。どんな嫌な相手にだって頭を下げるだろう。

「――分かりました。この私が責任を持ち、許可致しましょう。詳しく話を聞かせて下さい」
「はいっ、有難う御座います!」

 こうしてアーサー殿下からの正式な許可を貰い、ミンスロッティを伴ってバハム邸へと向かう事が決定した。決行は明後日の満月の夜だ。
しおりを挟む
感想 29

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

悪役令嬢は推し活中〜殿下。貴方には興味がございませんのでご自由に〜

みおな
恋愛
 公爵家令嬢のルーナ・フィオレンサは、輝く銀色の髪に、夜空に浮かぶ月のような金色を帯びた銀の瞳をした美しい少女だ。  当然のことながら王族との婚約が打診されるが、ルーナは首を縦に振らない。  どうやら彼女には、別に想い人がいるようで・・・

悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

ペトラ
恋愛
   ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。  戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。  前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。  悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。  他サイトに連載中の話の改訂版になります。

性悪という理由で婚約破棄された嫌われ者の令嬢~心の綺麗な者しか好かれない精霊と友達になる~

黒塔真実
恋愛
公爵令嬢カリーナは幼い頃から後妻と義妹によって悪者にされ孤独に育ってきた。15歳になり入学した王立学園でも、悪知恵の働く義妹とカリーナの婚約者でありながら義妹に洗脳されている第二王子の働きにより、学園中の嫌われ者になってしまう。しかも再会した初恋の第一王子にまで軽蔑されてしまい、さらに止めの一撃のように第二王子に「性悪」を理由に婚約破棄を宣言されて……!? 恋愛&悪が報いを受ける「ざまぁ」もの!! ※※※主人公は最終的にチート能力に目覚めます※※※アルファポリスオンリー※※※皆様の応援のおかげで第14回恋愛大賞で奨励賞を頂きました。ありがとうございます※※※ すみません、すっきりざまぁ終了したのでいったん完結します→※書籍化予定部分=【本編】を引き下げます。【番外編】追加予定→ルシアン視点追加→最新のディー視点の番外編は書籍化関連のページにて、アンケートに答えると読めます!!

変態王子&モブ令嬢 番外編

咲桜りおな
恋愛
「完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい」と 「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」の 番外編集です。  本編で描ききれなかったお話を不定期に更新しています。 「小説家になろう」でも公開しています。

王子の片思いに気付いたので、悪役令嬢になって婚約破棄に協力しようとしてるのに、なぜ執着するんですか?

いりん
恋愛
婚約者の王子が好きだったが、 たまたま付き人と、 「婚約者のことが好きなわけじゃないー 王族なんて恋愛して結婚なんてできないだろう」 と話ながら切なそうに聖女を見つめている王子を見て、王子の片思いに気付いた。 私が悪役令嬢になれば、聖女と王子は結婚できるはず!と婚約破棄を目指してたのに…、 「僕と婚約破棄して、あいつと結婚するつもり?許さないよ」 なんで執着するんてすか?? 策略家王子×天然令嬢の両片思いストーリー 基本的に悪い人が出てこないほのぼのした話です。

【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。

樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」 大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。 はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!! 私の必死の努力を返してー!! 乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。 気付けば物語が始まる学園への入学式の日。 私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!! 私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ! 所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。 でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!! 攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢! 必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!! やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!! 必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。 ※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。

【完結】元お飾り聖女はなぜか腹黒宰相様に溺愛されています!?

雨宮羽那
恋愛
 元社畜聖女×笑顔の腹黒宰相のラブストーリー。 ◇◇◇◇  名も無きお飾り聖女だった私は、過労で倒れたその日、思い出した。  自分が前世、疲れきった新卒社会人・花菱桔梗(はなびし ききょう)という日本人女性だったことに。    運良く婚約者の王子から婚約破棄を告げられたので、前世の教訓を活かし私は逃げることに決めました!  なのに、宰相閣下から求婚されて!? 何故か甘やかされているんですけど、何か裏があったりしますか!? ◇◇◇◇ お気に入り登録、エールありがとうございます♡ ※ざまぁはゆっくりじわじわと進行します。 ※「小説家になろう」「エブリスタ」様にも掲載しております(アルファポリス先行)。 ※この作品はフィクションです。特定の政治思想を肯定または否定するものではありません(_ _*))

処理中です...