完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな

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第二章

クラーク・バハム伯爵

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「それで、どこまでイベントは進んでいる状態な訳?」

 ミンスロッティ様が問うとアスチルゼフィラ様がそれに答えた。

「シナリオでは殿下達はバーベンス公爵に監禁されていて、そこへ協力者と共にヒロインが救出に向かうっていう流れだったのは覚えてますか?」
「勿論よ」
「でも現状ではバーベンス公爵は今、地下牢に捕らえられているんです。なので別の誰かが攫ったという事になる……」
「それで、心辺りは?」
「クラーク・バハム伯爵……バーベンス公爵の実弟です。監禁場所も恐らくシナリオ通りのバハム邸」

 その名を聞いてミンスロッティの顔が嫌そうに少し歪む。クラーク・バハム伯爵は普段、邸に引き籠っていて何やら怪しげな研究をしているという噂のある人物だ。社交界には見向きもせず、ひたすら研究に没頭していて邸の中からは奇妙な動物の鳴き声なんかが時折聞こえてくるとかこないとか。

「シナリオ変わってても、やっぱりあのバハム邸に行かなきゃいけないの~? あそこ気味悪いのよね」

 どうやらバハム邸の様子を例の『乙女ゲーム』とやらで知っているらしく、ヤダヤダと首を振っている。

「そんなに気味の悪いお邸なの?」
「はい。ゲームの方でもバーベンス公爵に攫われて殿下達は、このバハム邸の地下実験室に監禁されているんですけど……バハム伯爵が生み出した魔物が潜んでるんですよ」
「魔物……!」

 普段、王都では魔物は見る事がない。それは我がローゼン公爵家の騎士達が辺境の地を近隣諸国だけでなく、魔物からも守っているからだ。それなのに、まさか国内に魔物をわざわざ生み出している者が居ただなんて……。

「けれど殿下達は何故そんな所に……」

 王族には魔法は効かない。そしてタクトお兄様は武術に長けている。そんな者達をわざわざ苦労して攫い、一体何を企んでいるのだろうか。

「これはゲームの中ではあまり多くは語られてないのですが、どうやら殿下達の魔力を使ってバハム伯爵の亡くなった奥様を生き返らせようとしていたみたいなんですよ」
「バハム伯爵は錬金術に長けているって設定だったものね。迷惑な話よ」

 二人からの話を聞いてゾッとした。早く殿下達を助け出さなければいけない。取り敢えず今日の所はミンスロッティ様とは一旦別れて、後日救出の決行日に再び彼女を迎えに来る事になった。この救出作戦を決行するには、どうしてもあと一人協力して貰わなければいけない人物が居る。

 ――翌日。あたし達三人は事前に約束を取り付けていたアーサー殿下に面会しに王宮へと向かった。
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