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第二章
新たな事件
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あたしが殿下の執務室を訪れてから数日が経った。邸でお兄様達の姿も全く見掛ける事がなくなり、違和感を覚えつつ学園生活を送っていた。お父様とお母様とは毎日一緒に食事はするけれど、お兄様達の事を聞いても「今忙しいみたいなの」との一点張り。それならそれで仕方ないのだけど、何だかお母様は最近眠れてないみたいで日に日に目の下に隈が浮かんで来ている。
「マイリー、何かおかしいとは感じない?」
あたしの私室でお茶を淹れてくれている侍女のマイリ―に、そう問いかけると彼女は作り笑顔を顔に張り付けてニコリと笑ってみせる。
「いいえ、お嬢様の考えすぎですよ」
「……ねえ、何か隠してるでしょ? 貴方の事、何年見て来たと思ってるの。誤魔化しても無駄よ。お兄様達の事知っているなら教えなさい」
マイリ―は少し困った顔になり、持っていたティーポットをテーブルへと置いた。
「……多くは知りません」
「構わないわ」
「タクト様、スクト様、そしてアルスト殿下が現在行方不明になっておられます」
「行方…不明……い、いつから?」
マイリ―の言葉に一瞬息を呑んだ。震えそうになる手を膝の上でぎゅっと握りしめる。
「お嬢様が殿下の執務室を訪れたすぐ後、です。……大丈夫ですか、やはり話さない方が良かったのでは……」
「いいえ、いいえ大丈夫よ。続けて頂戴」
先を促すとマイリ―があたしの傍で跪いて顔を覗き込みながら心配そうな顔であたしの手を上からそっと包み込んだ。
「まだ数日の事ですので公にはなっておりません。なのでこの事は内密に願います。勿論、王家及びローゼン家の者達が全力で行方を追っています」
「……そう、分かったわ。ありがとう」
「お嬢様、大丈夫です。きっとすぐに見つかります」
「……ええ、そうね。我が家の者達はとても優秀だもの、大丈夫に決まっているわ」
大きく息を吸い込んでバクバクする心臓の鼓動を整える。まさかそんな事態になっていたなんて、全然知らなかった。
一人で頭の中を整理したくてマイリ―に退室を命じると「何かありましたらお呼びください」と頭を下げて部屋から出て行った。パタン、と扉が閉まるとあたしはソファーの背にもたれた。
まだ先日のクーデターの件も片付いてはいない。主犯のバーベンス公爵は来週には裁判へとかけられる予定になっており、他の貴族達の尋問も行っている最中だと聞いている。そんなゴタゴタしている中、王太子だけでなく二人の公爵家令息が行方不明になるだなんて……。
「殿下……お兄様……」
不安で泣きそうになるのを堪える。あたしがメソメソしていても何も解決も進展もしないのだ。我がローゼン家の暗部達も動いているのだろうから、捜索は任せるしかない。あたしに出来る事は何もないのだろうか……ただここでジッと待っているしか出来ないの?
そう思い悩んで頭を抱えていると、申し訳なさそうにマイリ―が部屋の扉をノックした。
「お嬢様……玄関にご友人方がお見えになってますが、どうなさいますか?」
「……どなたが来ているの? ロメリアンヌ?」
「それが……ピスケリー伯爵令嬢とイーグル侯爵令嬢です。火急の用件との事ですが、お帰り頂いた方が良いですか?」
「アスチルゼフィラ様とジュディ?」
ジュディ・イーグルは親友の一人だが、アスチルゼフィラ様と一緒というのが不思議な組み合わせでならない。アスチルゼフィラ様はタクトお兄様の婚約者だけど、あたし達とはそこまで親密な仲という訳でもなかったりする。クラスメイトなので日常会話くらいはするけれど……。
「……いいわ、通して頂戴」
疑問符は頭に浮かぶけれど、あたしは取り敢えず話を聞いてみる事にした。
「マイリー、何かおかしいとは感じない?」
あたしの私室でお茶を淹れてくれている侍女のマイリ―に、そう問いかけると彼女は作り笑顔を顔に張り付けてニコリと笑ってみせる。
「いいえ、お嬢様の考えすぎですよ」
「……ねえ、何か隠してるでしょ? 貴方の事、何年見て来たと思ってるの。誤魔化しても無駄よ。お兄様達の事知っているなら教えなさい」
マイリ―は少し困った顔になり、持っていたティーポットをテーブルへと置いた。
「……多くは知りません」
「構わないわ」
「タクト様、スクト様、そしてアルスト殿下が現在行方不明になっておられます」
「行方…不明……い、いつから?」
マイリ―の言葉に一瞬息を呑んだ。震えそうになる手を膝の上でぎゅっと握りしめる。
「お嬢様が殿下の執務室を訪れたすぐ後、です。……大丈夫ですか、やはり話さない方が良かったのでは……」
「いいえ、いいえ大丈夫よ。続けて頂戴」
先を促すとマイリ―があたしの傍で跪いて顔を覗き込みながら心配そうな顔であたしの手を上からそっと包み込んだ。
「まだ数日の事ですので公にはなっておりません。なのでこの事は内密に願います。勿論、王家及びローゼン家の者達が全力で行方を追っています」
「……そう、分かったわ。ありがとう」
「お嬢様、大丈夫です。きっとすぐに見つかります」
「……ええ、そうね。我が家の者達はとても優秀だもの、大丈夫に決まっているわ」
大きく息を吸い込んでバクバクする心臓の鼓動を整える。まさかそんな事態になっていたなんて、全然知らなかった。
一人で頭の中を整理したくてマイリ―に退室を命じると「何かありましたらお呼びください」と頭を下げて部屋から出て行った。パタン、と扉が閉まるとあたしはソファーの背にもたれた。
まだ先日のクーデターの件も片付いてはいない。主犯のバーベンス公爵は来週には裁判へとかけられる予定になっており、他の貴族達の尋問も行っている最中だと聞いている。そんなゴタゴタしている中、王太子だけでなく二人の公爵家令息が行方不明になるだなんて……。
「殿下……お兄様……」
不安で泣きそうになるのを堪える。あたしがメソメソしていても何も解決も進展もしないのだ。我がローゼン家の暗部達も動いているのだろうから、捜索は任せるしかない。あたしに出来る事は何もないのだろうか……ただここでジッと待っているしか出来ないの?
そう思い悩んで頭を抱えていると、申し訳なさそうにマイリ―が部屋の扉をノックした。
「お嬢様……玄関にご友人方がお見えになってますが、どうなさいますか?」
「……どなたが来ているの? ロメリアンヌ?」
「それが……ピスケリー伯爵令嬢とイーグル侯爵令嬢です。火急の用件との事ですが、お帰り頂いた方が良いですか?」
「アスチルゼフィラ様とジュディ?」
ジュディ・イーグルは親友の一人だが、アスチルゼフィラ様と一緒というのが不思議な組み合わせでならない。アスチルゼフィラ様はタクトお兄様の婚約者だけど、あたし達とはそこまで親密な仲という訳でもなかったりする。クラスメイトなので日常会話くらいはするけれど……。
「……いいわ、通して頂戴」
疑問符は頭に浮かぶけれど、あたしは取り敢えず話を聞いてみる事にした。
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