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第一章
離れていく二人
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「え……エスコートして頂けないのですか」
「あぁ、すまないね。その日はタクトにでも頼んで貰えないだろうか」
今日は王城での恒例のお茶会に来ていた。最近は殿下の部屋で過ごす事は無くなり、初めて殿下とお茶をしたあの池がある庭園にて行われるばかりだった。なので、雨が降ったらお茶会は中止される。それでも、殿下と一緒に過ごせる数少ない時間なのであたしは毎回楽しみにしていた。
テーブルで一息ついた頃、殿下から次のダンスパーティではエスコート出来ないと告げられた。理由は話して頂けない。ただ、無理だと告げるばかりだ。今迄はどんな時でも殿下がエスコートして下さっていて、ミンスロッティ様と親しげになってからもそれだけは変わらなかった。
「そ……う、で……すか。……分かりました」
「ドレスはいつもの様に贈らせて貰うから、許して欲しい」
「……はい」
震える手を隠す様にテーブルの下へとやる。胸が苦しい。涙が零れそうになるのを必死に堪える。
朝の挨拶、昼食、殿下からの自宅への訪問、殿下の私室への訪問……次々と出来なくなり、今度はエスコート迄して貰えなくなるとは。悪役令嬢の影響が大きすぎて、そしてもう自分ではどうしようもない所まで色々な事が変化してしまって、恐怖を感じる。
「あ……のっ、殿下」
「うん、なんだい」
「もう……お心が無いのなら、婚約者をあの方に変えて頂けませんか? その方が殿下も良……」
「陛下がお決めになられたって事を忘れてしまったのかい?」
じぃ……と、真っ直ぐな瞳でこちらを見据えられる。感情の無い、ただグリーンの瞳。
「……申し訳ありませんでした。今のは失言でした」
「私達は政略結婚なのだから、諦めて下さい。貴方が学園を卒業されたら婚姻は結ばれます」
「は……い」
このまま行くと婚約破棄はされないのかもしれない。ミンスロッティ様を側室に迎えられ、あたしはお飾りの王太子妃となるか、或いは逆にあたしは側室になさるつもりかもしれない。
そしてお二人の仲睦まじいお姿を一生傍で見て生きていく事になるのだろうか。なんて生き地獄だろう……それならいっその事、思い切り断罪されて婚約破棄された方がマシなんじゃないだろうか。
大好きな殿下のお傍には居られなくなるけど、この辛い恋から解放されるかもしれない。
「ティアナ」
「は、はいっ」
ふいに名前を呼ばれて顔を上げる。……名前をちゃんと呼ばれるのはいつ振りだろうか。
「何を考え込んでいるのかは知らないけど、貴方に出来る事は私を信じるだけだと思うよ」
「え……」
「では、今日はこの辺で失礼するよ」
そう言って殿下はサッと立ち上がり、従者を連れて王宮へと消えていった。
「あぁ、すまないね。その日はタクトにでも頼んで貰えないだろうか」
今日は王城での恒例のお茶会に来ていた。最近は殿下の部屋で過ごす事は無くなり、初めて殿下とお茶をしたあの池がある庭園にて行われるばかりだった。なので、雨が降ったらお茶会は中止される。それでも、殿下と一緒に過ごせる数少ない時間なのであたしは毎回楽しみにしていた。
テーブルで一息ついた頃、殿下から次のダンスパーティではエスコート出来ないと告げられた。理由は話して頂けない。ただ、無理だと告げるばかりだ。今迄はどんな時でも殿下がエスコートして下さっていて、ミンスロッティ様と親しげになってからもそれだけは変わらなかった。
「そ……う、で……すか。……分かりました」
「ドレスはいつもの様に贈らせて貰うから、許して欲しい」
「……はい」
震える手を隠す様にテーブルの下へとやる。胸が苦しい。涙が零れそうになるのを必死に堪える。
朝の挨拶、昼食、殿下からの自宅への訪問、殿下の私室への訪問……次々と出来なくなり、今度はエスコート迄して貰えなくなるとは。悪役令嬢の影響が大きすぎて、そしてもう自分ではどうしようもない所まで色々な事が変化してしまって、恐怖を感じる。
「あ……のっ、殿下」
「うん、なんだい」
「もう……お心が無いのなら、婚約者をあの方に変えて頂けませんか? その方が殿下も良……」
「陛下がお決めになられたって事を忘れてしまったのかい?」
じぃ……と、真っ直ぐな瞳でこちらを見据えられる。感情の無い、ただグリーンの瞳。
「……申し訳ありませんでした。今のは失言でした」
「私達は政略結婚なのだから、諦めて下さい。貴方が学園を卒業されたら婚姻は結ばれます」
「は……い」
このまま行くと婚約破棄はされないのかもしれない。ミンスロッティ様を側室に迎えられ、あたしはお飾りの王太子妃となるか、或いは逆にあたしは側室になさるつもりかもしれない。
そしてお二人の仲睦まじいお姿を一生傍で見て生きていく事になるのだろうか。なんて生き地獄だろう……それならいっその事、思い切り断罪されて婚約破棄された方がマシなんじゃないだろうか。
大好きな殿下のお傍には居られなくなるけど、この辛い恋から解放されるかもしれない。
「ティアナ」
「は、はいっ」
ふいに名前を呼ばれて顔を上げる。……名前をちゃんと呼ばれるのはいつ振りだろうか。
「何を考え込んでいるのかは知らないけど、貴方に出来る事は私を信じるだけだと思うよ」
「え……」
「では、今日はこの辺で失礼するよ」
そう言って殿下はサッと立ち上がり、従者を連れて王宮へと消えていった。
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