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変態王子Side 執務室のよくある出来事
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「――――という報告が上がっておりまして……、てゆーかアル!ちゃんと聞いてるのかよ!」
「あぁ、聞いてるよ」
ここはオルプルート王国王太子の執務室。
あたしの婚約者のアルスト殿下と、その側近であるあたしのお兄様たちが執務をこなしている。殿下の親友であるタクトお兄様は、普段と違って執務中は殿下に敬語を使っているのだけど……途中から普段通りの話し方になってしまった。
「その件はスクトに今調べさせている所だ、なぁ? スクト」
「はい、あと二日ほどあれば報告が出来ます」
スクトお兄様は殿下の方も見向きもせず、ご自分の机の上にある書類をもの凄いスピードでめくっている。
「という訳だ……ちゅっ」
「ひゃっ」
あたしはというと、何故か仕事中の執務室の、更に言えば殿下の膝の上に乗せられて……殿下の仕事の合間に時折降ってくるキスに耐えているところだ。殿下にこうやって甘やかされるのは嬉しいんだけど、それよりも何よりも机を挟んだ向こう側に立ってるタクトお兄様の視線が痛い。
「あるぅううううううう! ティアナを膝から下ろせ!」
「何でだよ、ちゃんと仕事はしてるじゃないか。なぁ、スクト?」
「……まぁ、そうですね。処理速度も全く落ちておりません。逆に上がっているのが不思議ですけど」
「ほら、な?」
あぁ、タクトお兄様が拳を握ってプルプルと震えてらっしゃるわ。
「何ならタクトもゼフィー嬢を呼んで、膝に乗せればいいじゃないか」
ゼフィー嬢とは、最近タクトお兄様が婚約されたピスケリー伯爵家のご令嬢だ。あたしのクラスメイトでもある。お二人はずっと恋仲だったと聞いたのは、婚約が決まったゼフィー嬢が邸に挨拶に来られた時だった。タクトお兄様にそんな方が居たなんて、全然知らなかったわ。
「乗せっ……乗せる訳ないだろうが!」
見る間に顔が赤くなっていくタクトお兄様。
「執務室の前で熱いキスしてたヤツが、今更照れるな」
「まぁっ、お兄様そんな事を……」
タクトお兄様の意外な一面を見てしまったわ。結構情熱的なのね。
「あ、あれはお前が……」
「……ふーん、そんな事してたんだぁ。タクトって実はムッツリスケベ?」
書類から目を離さずに殿下のタクトお兄様弄りに参加するスクトお兄様。
「なっ……! ちょ、ちょっと外出て来る!」
ぷしゅーっ!という音を立ててるかの様に真っ赤になったタクトお兄様は、頭を抱えながら執務室を出ていかれた。
「……ふふ、からかい過ぎたかな」
「可愛いですからねぇ、兄上は」
殿下とスクトお兄様はいつもこうやってタクトお兄様で遊ばれている。可哀想なタクトお兄様……。でも真っ赤になったタクトお兄様は、何だかあたしから見ても可愛らしく思えてしまう。
「そろそろ昼だな。俺たちも少し休憩を挟もう」
「そうですねぇ」
スクトお兄様と別れて、あたしと殿下は殿下の私室へと向かった。部屋の扉を閉めると同時に、殿下があたしの腰を引き寄せた。
「仕事頑張ったご褒美、欲しいな」
「ご、ご褒美ですか?」
とても美しく整ったお顔を近づけられてドキドキする。あたしはそっと腕を伸ばして、殿下の少し色素の薄い茶色の髪を撫でる。
「あぁ……それも鼻血が出そうなくらい凄く嬉しいけど、もっと他のも欲しいな」
「他の、ですか……」
鼻血が出てしまっては大変だと思うのだけど、きっと鼻血が出てても殿下はお美しいのだろうな……なんて、おかしな事を考えてしまう。
「えっと……じゃあ」
あたしは髪を撫でていた手を少し下におろして、今度は殿下の頬を人差し指で“つん……”と触ってみる。あっ……ダメ! これだけでも凄く恥ずかしい。恥ずかしさで思わず顔をそらしてしまった。
「うぐっ……」
殿下から何かくぐもった声が聞こえた。と、思ったらいきなり殿下があたしを抱きかかえて寝室の方へと歩き出した。
「えっ、で……殿下っ!?」
「可愛すぎ! なにそれ、可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い! もう、キスしまくりの刑を執行する」
「ひえええええっ!?」
殿下のキスしまくりの刑からようやく解放されたのは、お昼を食べ終えたスクトお兄様が待ちくたびれて迎えに来た時だった。寝室でグッタリ倒れているあたしから殿下を引っぺがしたスクトお兄様は嫌がる殿下を無理矢理、執務室へと連行された。
殿下はお昼ご飯抜きだ。あたしはその後ゆっくりと殿下の私室で遅いお昼ご飯を頂きました。
「あぁ、聞いてるよ」
ここはオルプルート王国王太子の執務室。
あたしの婚約者のアルスト殿下と、その側近であるあたしのお兄様たちが執務をこなしている。殿下の親友であるタクトお兄様は、普段と違って執務中は殿下に敬語を使っているのだけど……途中から普段通りの話し方になってしまった。
「その件はスクトに今調べさせている所だ、なぁ? スクト」
「はい、あと二日ほどあれば報告が出来ます」
スクトお兄様は殿下の方も見向きもせず、ご自分の机の上にある書類をもの凄いスピードでめくっている。
「という訳だ……ちゅっ」
「ひゃっ」
あたしはというと、何故か仕事中の執務室の、更に言えば殿下の膝の上に乗せられて……殿下の仕事の合間に時折降ってくるキスに耐えているところだ。殿下にこうやって甘やかされるのは嬉しいんだけど、それよりも何よりも机を挟んだ向こう側に立ってるタクトお兄様の視線が痛い。
「あるぅううううううう! ティアナを膝から下ろせ!」
「何でだよ、ちゃんと仕事はしてるじゃないか。なぁ、スクト?」
「……まぁ、そうですね。処理速度も全く落ちておりません。逆に上がっているのが不思議ですけど」
「ほら、な?」
あぁ、タクトお兄様が拳を握ってプルプルと震えてらっしゃるわ。
「何ならタクトもゼフィー嬢を呼んで、膝に乗せればいいじゃないか」
ゼフィー嬢とは、最近タクトお兄様が婚約されたピスケリー伯爵家のご令嬢だ。あたしのクラスメイトでもある。お二人はずっと恋仲だったと聞いたのは、婚約が決まったゼフィー嬢が邸に挨拶に来られた時だった。タクトお兄様にそんな方が居たなんて、全然知らなかったわ。
「乗せっ……乗せる訳ないだろうが!」
見る間に顔が赤くなっていくタクトお兄様。
「執務室の前で熱いキスしてたヤツが、今更照れるな」
「まぁっ、お兄様そんな事を……」
タクトお兄様の意外な一面を見てしまったわ。結構情熱的なのね。
「あ、あれはお前が……」
「……ふーん、そんな事してたんだぁ。タクトって実はムッツリスケベ?」
書類から目を離さずに殿下のタクトお兄様弄りに参加するスクトお兄様。
「なっ……! ちょ、ちょっと外出て来る!」
ぷしゅーっ!という音を立ててるかの様に真っ赤になったタクトお兄様は、頭を抱えながら執務室を出ていかれた。
「……ふふ、からかい過ぎたかな」
「可愛いですからねぇ、兄上は」
殿下とスクトお兄様はいつもこうやってタクトお兄様で遊ばれている。可哀想なタクトお兄様……。でも真っ赤になったタクトお兄様は、何だかあたしから見ても可愛らしく思えてしまう。
「そろそろ昼だな。俺たちも少し休憩を挟もう」
「そうですねぇ」
スクトお兄様と別れて、あたしと殿下は殿下の私室へと向かった。部屋の扉を閉めると同時に、殿下があたしの腰を引き寄せた。
「仕事頑張ったご褒美、欲しいな」
「ご、ご褒美ですか?」
とても美しく整ったお顔を近づけられてドキドキする。あたしはそっと腕を伸ばして、殿下の少し色素の薄い茶色の髪を撫でる。
「あぁ……それも鼻血が出そうなくらい凄く嬉しいけど、もっと他のも欲しいな」
「他の、ですか……」
鼻血が出てしまっては大変だと思うのだけど、きっと鼻血が出てても殿下はお美しいのだろうな……なんて、おかしな事を考えてしまう。
「えっと……じゃあ」
あたしは髪を撫でていた手を少し下におろして、今度は殿下の頬を人差し指で“つん……”と触ってみる。あっ……ダメ! これだけでも凄く恥ずかしい。恥ずかしさで思わず顔をそらしてしまった。
「うぐっ……」
殿下から何かくぐもった声が聞こえた。と、思ったらいきなり殿下があたしを抱きかかえて寝室の方へと歩き出した。
「えっ、で……殿下っ!?」
「可愛すぎ! なにそれ、可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い! もう、キスしまくりの刑を執行する」
「ひえええええっ!?」
殿下のキスしまくりの刑からようやく解放されたのは、お昼を食べ終えたスクトお兄様が待ちくたびれて迎えに来た時だった。寝室でグッタリ倒れているあたしから殿下を引っぺがしたスクトお兄様は嫌がる殿下を無理矢理、執務室へと連行された。
殿下はお昼ご飯抜きだ。あたしはその後ゆっくりと殿下の私室で遅いお昼ご飯を頂きました。
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