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口をつぐんだ果ての想い
しおりを挟むお題「出ていきなさい」で始まり、「入りなさいよ」で終わる二人の会話文。
「出ていきなさい」
「嫌です、先生」
「ほんといつまでいるのよ、もうとっくに下校のじ~か~ん!保健室じゃなくて家で休みなさい」
「夕暮れがまぶしいですね~……ほら、甲子園が決まった野球部のかけ声も、いつもより気合いが入っているような」
「そうやって、心にもないテキトーなこと言ってはぐらかして」
「先生と一緒にいたいだけなんです」
「うん、君に気に入られてるのはよく分かってる。ただ今日はいつもに増して粘るね」
「そうですね~……今の僕にはこの時間にしがみつくことしかできないんですよ」
「君はまだ若いんだから、もっと他にやることもあるでしょう」
「受験べんきょ、とかですか」
「お、意外に真面目」
「そうなんです、真面目なんです、僕はA大学をちゃんと目指さなければならなくなったんです」
「やる気スイッチ入ったのね」
「また先生に会いたいからです」
「え?」
「僕はもうすぐ遠くに引っ越します」
「……」
「A大学に入れば、この街に戻って来れます」
「……」
「先生、好きです、迎えに来てもいいですか?」
「……………」
「とゆーわけで、ここは真面目に家に帰って勉強します」
「……」
「さようなら」
「……大学」
「え?」
「入りなさいよ」
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