ベルガモットの空言

小春佳代

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遠ざかりたい

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私の心の中心にいるあなたから
遠ざかりたい

遠ざかりたい
遠ざかりたい
と呼吸に合わせて唱えながら
ペダルを漕ぎ続ける

風をきる自転車は
私にいろんな景色を見せてくれるよ

木ノ実を不意に落とす豊かな自然も
日の光を散りばめた都会的な建物も
今まで出会ってきた友達だって
沿道の声援のように
私に手を振ってくれるよ

遠ざかりたい
遠ざかりたい
私の心の中心にいるあなたから
遠ざかりたい

一体どこまで行けば

突然、赤い電子の光にブレーキ
無意識にハンドルを離した手は
心臓のあたりを掴んでいた

はぁ、はぁ、

遠ざかれた?いなくなった?

はぁ、はぁ、

「いるよ」

はぁ、はぁ、

「僕から特にさよならみたいなことは言わないよ」

ほんのちょっと逃げることぐらいしか
できない私に向かって
「さよならを言うなら君からだ」
と突き付けるあなた

ずるい、ずるい、と
乱れた息に混じる感情

霞んだ道の果てを見つめる瞳

見えないよ、全然
この恋の終わり方
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