ベルガモットの空言

小春佳代

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白い箱に漂う文字

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白い箱のような部屋で
私はいつも一人
言葉を宙に浮かべてる

独り言は口から
細く黒い文字となって
白い部屋を漂っている

時間が経つとどんどん消えてゆく文字を
来る日も来る日も一人眺めている

白い箱のような部屋には
顔ほどの大きさの
正方形の小窓があるの

開かない小窓の外側も
ただの真っ白な世界なの

でも私はたまにそこから確認するの
あの人は、来ないかな?って

するとノックが聞こえるの
鍵を開けると
表情の見えないあの人が入ってくる

あの人はまず
空中に漂う黒い文字をつかんでくれる

そして
玄関で立ち話をしてくれたり、
時間がある時はローテーブルの前に座り
彼自身のことを語ってくれたりすることもあるの

私は嬉しくてその時だけ
少女みたいになるのよ

「おやすみ」

私の心はまた一人
明日もまた細く黒い文字を
口から漂わせる日々がやってくる

現実にいる自分の身体を
奮い立たせるために
心がこんな白い箱に
逃げて来るしかなかったなんて
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