罪深きシュトーレン

小春佳代

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「アイン ツヴァイ ドライ」

まだ幼さの残る青い目をより一層透き通らせ、彼女は焦げ茶色の髪を肩で揺らしながら不思議な言葉を発した。

「理沙ちゃん、それって何?」

家がお隣同士の僕らはお互い別々の小学校に入学したばかりで、まだ心がふわふわしていた。

「夏樹くんが早くひかり小学校に慣れますようにーってゆう呪文」

もともと大学付属の幼稚園に通っていた彼女は、そのままその大学付属の私立小学校へ。僕は公立の小学校へ。

「ありがとう」

僕のちょっぴり不安だった心は、彼女のきらきらした魔法の言葉にぐるぐる巻きにされて落ち着きを取り戻した。

「ねえ、今度の日曜日、ママがシュト―レンを焼いてくれるって。良かったら夏樹くんのパパとママもどうぞ、って」

ドイツ人のママを持つ理沙ちゃん。

オレンジ色のレンガで囲まれた大きなお家のお庭で、秘密事を打ち明けるようにひっそりと話す理沙ちゃん。

大好きな、僕の理沙ちゃん。

「シュト―レンって、あのクリスマスに食べたケーキ?」

ねえ、どうして。

「そうだよ。今度は、春のシュト―レン」

いなくなったの?
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