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六
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彼の表情の変化は、数年経った今でもはっきり覚えている。
幼稚園教員への道を一歩踏み出した、短大合格発表の日のことだ。
思いの丈をまくし立てるように話した私は、最後に自立の喜びを口にした。
すると石像のように微笑みを湛え続けた彼の表情から、私への執着が剝がれ落ちてゆく。
はらはらと、はらはらと。
どうしてそんな満ち足りていないような顔をするの。
最後に彼はこう言った。
「カエルになれたんだね」
クラクションにハッとした。
青信号だ。私は急いで車を発進させる。
ここのところ、園への通勤途中によく彼のことを思い出すようになった。逃避なんだろうか。
当時、彼は間違いなく私の命に水を注いでくれていた。
『水』という優しさを。
それなのに。
幼稚園教員への道を一歩踏み出した、短大合格発表の日のことだ。
思いの丈をまくし立てるように話した私は、最後に自立の喜びを口にした。
すると石像のように微笑みを湛え続けた彼の表情から、私への執着が剝がれ落ちてゆく。
はらはらと、はらはらと。
どうしてそんな満ち足りていないような顔をするの。
最後に彼はこう言った。
「カエルになれたんだね」
クラクションにハッとした。
青信号だ。私は急いで車を発進させる。
ここのところ、園への通勤途中によく彼のことを思い出すようになった。逃避なんだろうか。
当時、彼は間違いなく私の命に水を注いでくれていた。
『水』という優しさを。
それなのに。
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