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第三章 第四の女
10-3.アリスンの見た夢
しおりを挟む「さっきの子、何だったんだろうね」
「うーん、全く覚えがない…」
車椅子の上で、景羽が不思議そうに言う。
アリスンは少し考えて答えた。
「…アリスン、ありがとうね」
景羽の突然の言葉に、アリスンは言葉に詰まった。
「ずっとお姉ちゃんと二人だったから、アリスンていう友達が出来てうれしい」
「ん…? …いや、お礼を言われるようなことじゃない」
「言いたいの。アリスンは私の親友」
景羽の呟きに、アリスンは嬉しくなって微笑んだ。
「おまたせー!」
景羽の姉、聖が明るい笑顔で駆け寄ってくる。
手にはコンビニで買ったのか、タピオカの入ったミルクティーが三つ用意されていた。
「はい、景羽、アリスンも!」
「ありがとう、お姉ちゃん!」
「聖、ありがとう」
三人でストローを吸いながら、目的地のショッピングモールへと歩みを続けた。
「ね、何話してたの。ずいぶん楽しそうだったね」
「あ、さっき?アリスンは私たちの親友だねって話。…三人でいる時間がいつまでも続けばいいな…」
「…。そうだね!いつもありがとう、アリスン!」
笑顔で話す聖につられ、アリスンも幸福な気持ちになる。
アリスンの飲むミルクティーの底に、タピオカが溜まっているのを見て、聖が可笑しそうに笑った。
「アリスン、タピオカ、飲むの下手だよね」
「む、そんなことないぞ」
ずぞぞ、とタピオカだけ吸って誤魔化すアリスンに、景羽も可笑しそうにくすくすと笑う。
アリスンもフフ、と笑った。
ずっと、こんな生活がしたかった気がする。
大好きな友達と共に、普通の女の子らしく、青春を歩む。
すっかりタピオカだけ残ってミルクティーが無くなってしまったそれを、
吸いながら、アリスンは空を見上げた。
「ねぇ、アリスン」
ひそひそと、聖はアリスンに耳打ちした。
「良いバイトがあるんだけど、やってみる?」
聖は優しく微笑んだ。
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