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悪役令嬢、愛を伝える

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「メロディ様、私ね・・・」

 学園の授業は、ほとんどが男女同じだけど、令息に剣術の授業があるように、令嬢にも刺繍の授業がある。

 この時だけは男女別々で、つまりは私が唯一カイルと離れて授業を受ける時間だ。

「カイル様のことが本当に大好きなのです。もし、カイル様が私以外の人をお好きになって・・・それでも私との婚約に縛られていたとしたら、辛くて悲しいけれど、カイル様が幸せになるためなら解放してあげたいと思うくらい・・・愛しているのです」

 何故、こんな話になっているかというと。

 刺繍の先生がご用で、授業が自習になったのだ。

 それで、各自他の生徒の邪魔をしないという約束の元、刺繍の図案を考えるという体で図書室や庭などに散っていった。

 私とメロディは、学園にある薔薇園に来ていた。

 そして、薔薇を見ながら刺繍の図案を考えていたのだが、不意にメロディが聞いて来たのだ。

「ダミアン王太子殿下の紋章とは、どんな柄なのですか?」と。

 確かに普通の人、下位の貴族や平民の方などは、王太子殿下の紋章を見ることはあっても覚えてまではいないわよね。

 それで、ダミアンの紋章は『ドラゴンと王冠と双剣』だと教えて・・・

 どうしてそんな話になったのかを聞いたら、ダミアンの紋章をハンカチに刺繍して欲しいと頼まれたのだとか。

 そうか。
王妃様の件で、ダミアンは一歩踏み出すことにしたのね。

 私とカイルが婚姻し、ダミアンとメロディが婚姻すれば、王妃様の幽閉を解くことができるかもしれない。

 王妃様は、私が悪役令嬢として機能しないと、メロディの価値を他の貴族が納得しないと言っていたらしいけど、そんな心配いらないのにね。

 だって、アデライン公爵家とローレンス公爵家が後ろ盾になるのよ?

 表立って文句言えるところがあるとは思えないわ。

 そこに気付かないあたり、前世の記憶に引っ張られているわよね。

 で、メロディに刺繍をするのかとか話してたら私の話になって、何故か私もカイルに刺繍したハンカチを渡すことになって。

 アナスタシアは淑女教育で、刺繍もプロ並みだった。

 ローレンス公爵家の紋は、双頭の獅子と盾なのよね。

 カイルはそれに短剣が加わる。

 ちなみに私の紋は、アデライン公爵家の鷲にエンブレム、それに百合の花が加わるの。

 私もアナスタシアになって知ったのだけど、紋章は一人ひとり違うのよね。

 兄弟でも少しずつ変えてあって、父親が亡くなったら、嫡男が父親の紋章を受け継ぐ・・・とからしい。

 まさか聞くわけにもいかないから、本で調べたのだけど。

 こんな時、ググれる時代が懐かしいわ。


 


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