推ししか勝たん!〜悪役令嬢?なにそれ、美味しいの?〜

みおな

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攻略対象、退場させられる

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「この、馬鹿者がっ!」

 部屋でくつろいでいると、ドタドタと足音荒く部屋にやって来た父上が、いきなり俺を殴り飛ばした。

「ち、父上・・・いきなり何を」

 口の中に鉄の味が広がる。
血と共に折れた歯が床に落ちる。

 扉のところには、侮蔑の視線で俺を見る母上がいた。

 なんでそんな目で・・・

「婚約者のプライウッド伯爵令嬢に暴言を吐いたらしいな?しかも、殴ろうとしただと?」

「え、なんでそれを・・・あ、あの女、バラしやがったな」

「あの女とは、婚約者のことかっ?お前は婚約者をあの女呼ばわりしているのか!」

「ち、違う。そうじゃなくて、アデライン公爵令嬢だよ。俺のことを馬鹿にして来たんだ」

 俺は父上の怒りに慌ててそう言ったけど、それは悪手だった。

「ほう。お前は筆頭公爵家のご令嬢を、あの女呼ばわりできる身分だと思っているのか。そうか。やはりのおっしゃる通り、お前は貴族として相応しくないようだ。それにどうやら、婚約者のことを嫌っているようだな」

「・・・いや、そんなことは・・・」

「嘘を吐く必要はない。確か、タンドリー男爵家のエイミ嬢だったか?そんな好きな相手だというなら婚約させてやる」

 確かに、シシリーのことはあまり好きではない。

 俺のことを大切にしていないところがあって、可愛げがないと思っていた。

 見た目も悪くはないが、俺は可愛い系の方が好きだから、シシリーは好みから外れている。

 だけど、ワイアット侯爵家を俺は、どこかに婿入りしなければならない。

 嫡男の俺が家を継げない理由は、血の繋がらない姉の存在のせいだ。

 元々、ワイアット侯爵家は父の兄が継ぐはずだった。

 だが、馬車の事故で伯父とその妻の伯母は亡くなり、嫡女の従姉のみが怪我を負いながらも生き残った。

 父は仕方なく侯爵家を継いだが、あくまでも従姉が成人するまでの中継ぎとしてで、父の子供である俺も、どこかに婿入りしなければならない。

 従姉の存在を、煩わしいと思ったこともある。
 従姉が両親とともに亡くなっていたならば、俺は侯爵家の後継だったのに、と。

 だけど、父には俺のそんな気持ちは透けて見えていたようで、もしも従姉が継がないのなら、侯爵家は王家に爵位を返上する、と言われてしまった。

 侯爵家を継げないのなら、と出来るだけ高い爵位の家との婚約を望んだ俺に父が見つけて来た婚約者が、プライウッド伯爵令嬢シシリーだったのに・・・

 男爵家なんて、冗談じゃない。


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