推ししか勝たん!〜悪役令嬢?なにそれ、美味しいの?〜

みおな

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悪役令嬢、説き伏せる

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「お願い、聞いてくださいますわよね?」

 そう言うと、ダミアンはチラリと私の隣のカイルに視線を向けて・・・

 ふぅとため息を吐いた。

「分かった。アデライン嬢には、メロディ嬢のことで力になってもらったからな」

「あら?呼ぶようになられましたのね?婚約も秒読みでしょうか?」

「・・・近く父上には話をする予定だ」

 ダミアンがメロディに好意を抱き始めたことは、見ていてすぐに分かった。

 家格こそ低いが、本人の資質は十分に王太子妃に足りる。

 少なくとも、マチルダがメロディに勝っている点は家格だけだ。

 だけど今のままでは家格を盾に、マチルダに付き纏われる。

 そのことにうんざりしていたダミアンにとって、話し上手聞き上手のメロディは心の安らぎになったようだ。

 その上、乙女ゲームのヒロインであるメロディは、とても可愛い。

 家格以外は優れているからこそ、ラノベではハーレムエンドを築けたのだ。

 そして、その愛らしさに気付けば・・・
 ダミアンが恋に落ちるのは簡単だった。

 ただ一方のメロディはというと、ダミアンに好感は持っているものの、相手が王太子殿下だということでいつも一歩引いていた。

 まぁそこも、良識あるメロディの良いところである。

 だけどそれでは、いつまでも進展が望めないので、私はおせっかいをすることにした。

 メロディをアデライン公爵家に呼び、お泊まり会を強行したのである。

 不思議なもので、昼間は常識ある考えに縛られていても、夜になると人は感情的になりやすい。

 まぁ、公爵邸でのお泊まりに緊張しまくっていたメロディだけど、私カイルへの想いを語っていると、ようやくダミアンへの気持ちを口にした。

「アナスタシア様は・・・王太子妃に相応しい方だと思います」

「私は公爵家の娘ですから、確かに他の方よりはそれなりの教育を受けております。そうですわね、カイル様が王太子の座を簒奪なさるなら、王太子妃になりたいですわね」

 私はカイルの隣に立ちたいのであって、王太子妃になりたいわけではない。

 そう言うと、メロディは戸惑ったように目を伏せた。

「殿下はメロディ様に何と?」

「婚約者になって欲しいと、おっしゃられました。でも、私は男爵家の娘で・・・」

「殿下は最初から理解した上で、申し込まれたのでは?昔はともかく、今のこの国で求められているのは、家格ではなく本人の資質です。王家も本人の資質と、お互いの気持ちを重要視しています。メロディ様は殿下のことをお好きにはなれませんか?」

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