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悪役令嬢、怒る
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「きみ、誰に手をあげてるの?」
冷ややかなカイル様の声に、メイソンの悲鳴が重なる。
脂汗も出てるし、本気で折れるのでは?
「女性にあげるような手はいらないよね?折ってもいいね?」
「イダダダダダダ。やめっ、やめろっ!折っていいわけがあるかっ!」
「えー、でもきっときみのお父上も折っていいと言うと思うよ」
あー。確かに。
メイソンの父親である騎士団長のワイアット侯爵なら、腕どころか首を折りそう。
いや、まぁ、首折ったら死んじゃうけどね。
騎士団長は、息子だからと甘い処罰はしない。
むしろ、息子にこそ死ぬほど厳しい。
よくまぁ、あんな超絶真面目で素晴らしい人から、メイソンみたいなのが生まれたわよね。
ラノベにはほとんど出てはこなかったけど、奥様もメイソンを甘やかすタイプの人じゃなかったはず。
もちろん、ラノベ通りとは限らないけど。
「痛いっ!折れる!折れる!やめろっ!」
「人に物を頼む態度じゃないなぁ」
「やめっ・・・やめてくださいっ!」
ギリギリと、締め上げられた腕が、あと少し力を入れたらボキリと行きそうなところで、メイソンの泣きが入った。
カイルがポイっとメイソンの腕を離すと、メイソンはその場にうずくまった。
「言っとくけど、次はないよ」
「くそッ」
「反省してないなら、今から折っても良いんだよ?」
「お、覚えてろっ!」
負け犬の捨て台詞を吐いて、メイソンが逃げていく。
どこのチンピラだ、アンタは。
この場に残っているのは、私とカイル、それからシシリー様にマリアンヌ様。
そしてエイミとかいうヒロインもどき。
そのヒロインもどきは、カイルのことをうっとりした目で見ていた。
「かぁっこいい~!カイルさまぁ。私、エイミって言いますぅ」
「・・・シア。怪我してない?」
「大丈・・・」
「あのぉ!お茶でもご一緒しませんかぁ?」
バシッ!
「触るなっ!」
カイルが、ヒロインもどきの伸ばしてきた手を叩き落とす。
「いたぁい!ひどいですぅ、カイル様ぁ。ほら真っ赤になっちゃいました。責任とって医務室に連れてってください」
「貴女、先ほどから誰の許可を得てカイル様のお名前を呼んでいますの?」
「え?あっ!悪役令嬢のアナスタシアっ!」
悪役令嬢ね。
転生者の方だったか。
「公爵令嬢であるアナスタシア様のお名前を、勝手に呼び捨てで呼ぶだなんて!」
「あなた、誰ですか?カイル様ぁ。早く連れてってください~」
「私の大切な婚約者に触れないで下さい!」
今度はカイルに伸ばされた手を、私が叩く。
ふざけないで。
カイルは私のなんだから!
冷ややかなカイル様の声に、メイソンの悲鳴が重なる。
脂汗も出てるし、本気で折れるのでは?
「女性にあげるような手はいらないよね?折ってもいいね?」
「イダダダダダダ。やめっ、やめろっ!折っていいわけがあるかっ!」
「えー、でもきっときみのお父上も折っていいと言うと思うよ」
あー。確かに。
メイソンの父親である騎士団長のワイアット侯爵なら、腕どころか首を折りそう。
いや、まぁ、首折ったら死んじゃうけどね。
騎士団長は、息子だからと甘い処罰はしない。
むしろ、息子にこそ死ぬほど厳しい。
よくまぁ、あんな超絶真面目で素晴らしい人から、メイソンみたいなのが生まれたわよね。
ラノベにはほとんど出てはこなかったけど、奥様もメイソンを甘やかすタイプの人じゃなかったはず。
もちろん、ラノベ通りとは限らないけど。
「痛いっ!折れる!折れる!やめろっ!」
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「やめっ・・・やめてくださいっ!」
ギリギリと、締め上げられた腕が、あと少し力を入れたらボキリと行きそうなところで、メイソンの泣きが入った。
カイルがポイっとメイソンの腕を離すと、メイソンはその場にうずくまった。
「言っとくけど、次はないよ」
「くそッ」
「反省してないなら、今から折っても良いんだよ?」
「お、覚えてろっ!」
負け犬の捨て台詞を吐いて、メイソンが逃げていく。
どこのチンピラだ、アンタは。
この場に残っているのは、私とカイル、それからシシリー様にマリアンヌ様。
そしてエイミとかいうヒロインもどき。
そのヒロインもどきは、カイルのことをうっとりした目で見ていた。
「かぁっこいい~!カイルさまぁ。私、エイミって言いますぅ」
「・・・シア。怪我してない?」
「大丈・・・」
「あのぉ!お茶でもご一緒しませんかぁ?」
バシッ!
「触るなっ!」
カイルが、ヒロインもどきの伸ばしてきた手を叩き落とす。
「いたぁい!ひどいですぅ、カイル様ぁ。ほら真っ赤になっちゃいました。責任とって医務室に連れてってください」
「貴女、先ほどから誰の許可を得てカイル様のお名前を呼んでいますの?」
「え?あっ!悪役令嬢のアナスタシアっ!」
悪役令嬢ね。
転生者の方だったか。
「公爵令嬢であるアナスタシア様のお名前を、勝手に呼び捨てで呼ぶだなんて!」
「あなた、誰ですか?カイル様ぁ。早く連れてってください~」
「私の大切な婚約者に触れないで下さい!」
今度はカイルに伸ばされた手を、私が叩く。
ふざけないで。
カイルは私のなんだから!
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