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悪役令嬢、我慢する

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 結論として。

 私はマチルダがメロディに紅茶をかけるのを、見逃すことにした。

 ごめんよ、メロディ。
だってカイルが、この方がダミアンとの距離が縮まるって言うんだもの。

 確かにそれも一理ある!って思ったし。

 ただ、紅茶が熱くて火傷したらいけないから、その点は侍女を呼んでぬるめの紅茶を用意させた。

 うちの侍女たちは優秀である。

 マチルダの視線や動きで、立ち上がってメロディに近付くタイミングとかを見定めてた。

 マチルダは阿呆で考えなしだけど、ダミアンの前でメロディの頭から紅茶をかけるような真似はさすがにしないだろう。

 躓いた拍子にドレスにかかった、という体にするはずだ。

 まぁ王太子の前で、頭から堂々とかけれるようなら、それはそれですごいけど。

 マチルダは、メロディを排除してダミアンとお近づきになりたいのだから、その選択はしないと思う。

 ダミアンとメロディを近付けるという目的さえなければ、私メロディを守るところだけど、今回は目的のためにグッと我慢する。

 カイルの侍従は、すでにドレスを購入して来た。

 サファイア色のドレスとピンク色のドレスの二着。

 何故に二着?と思ったら、ドレスを準備しようとしたら、サファイア色のを差し出し、そうでなかったらピンク色のを私が差し出せるように、とのこと。

 さすがローレンス公爵家の侍従。
仕事が出来る。

 しかも、デザインが品が良いのに可愛くてメロディに良く似合いそう。

 センスもいいんだなぁ。
そういや、カイルが私にプレゼントしてくれるドレスもセンスがいい。

 などと考えているうちに、マチルダが立ち上がった。

 まず、紅茶のカップを持って動くこと自体がおかしい。

 夜会じゃないんだから、行動がおかしいことに何で気付かないかな。

 夜会なら、ワイン・・・まぁ私たちは未成年だからジュースだけど、を持って動くことはあり得る。

 基本が立ってのパーティーだからね。

 だけど、お茶会の場合は席が準備されてるから、飲み食いの場合は席に座ってるのよ。

 席を移った場合は、侍女がカップを回収して、新たな席に新しいお茶を淹れる。

 だから、カップを本人が持って移動なんてことは普通ではあり得ないのに。

「きゃっ!」

 バシャ!

 躓いたふりをして、マチルダが背後から座っているメロディのドレスの腰あたりに紅茶をぶちまけた。

 あー、本当にやったわ。

 驚いた様子のメロディと、慌てて席を立ったダミアン。

「何をやってるんだ!ゾルガー嬢」

「つ、躓いてしまって。ごめんなさい?ペイジ様」

「ペイジ嬢、大丈夫か?火傷は?」

「あ、平気です。でも、ドレスが・・・」

 男爵家のメロディからしたら、貴重なドレスだったんだろう。

 ごめんよ、メロディ。
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